この問題をどう解決するか。横溝さんたちは駅設備などのハード面、サービスなどのソフト面の両方から解決策を考えたが、どちらにも課題が見つかったという。
「一番の解決策は段差そのものをなくすことだが、駅のバリアフリー化には時間もコストも掛かる。一方、『駅員がベビーカーを手助けする』といった取り組みはあまり知られておらず、中には遠慮して頼めない人もいる」(横溝さん)
そうして行き着いたのが、ベビーメトロの原案。エレベーターの情報などをあらかじめ利用者に伝えることで、段差を回避してもらうというアイデアだった。
今度は駅施設ではなく、段差を気にせず移動するための情報にフォーカス。エレベーターを使って移動できるベビーカールートの有無、乗り換えに便利な車両の位置、駅の構内図などを確認できるWebサイトとして2018年3月に公開した。
利用者の反応は上々で、横溝さんも「想像以上にネガティブな反応がなくてびっくりした」という。需要のあるサービスだと分かったこともあり、実証実験期間も19年7月末まで延長になった。
現在公開されているベビーメトロは、利用者の意見をもとに機能を追加したバージョン2。構内図と合わせて表示しているGoogleマップでエレベーターやスロープ付きの出口を確認できるようになった。
ちなみにエレベーターの情報は、構内図やGoogleストリートビューなどの情報を参考に、1つずつデータベースに登録していったという。「ベビーカーで通れるかどうかも、もともと情報があったわけではないので、自分たちで1駅ずつ確認してルートを作成した。地道な作業だったが、多くの人に使ってもらえれば」(横溝さん)
天野さんは「ベビーメトロは、利用者に必要とされているサービス。最終的にどうサービス化するかは検討中だが、基本的には継続するつもりでいる」と話す。今後は、バージョン2で追加したGoogleマップに利用者の現在地を表示するといった機能改善を進める他、地図アプリや他の鉄道会社との連携も検討するとした。
一方、横溝さんは「エレベーターだけでなく、おむつ替えスペースの情報も知ってほしい」と話す。
「僕自身、子どもを連れていて慌ててトイレを探すことも多い。昔は駅におむつ替えスペースはないだろうと、わざわざデパートなどに行っていたが、実は駅にも使える場所はたくさんある。ベビーメトロを通じて、それに気付いてもらえれば」(横溝さん)
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