ところで日本人のITウォッチャーに中国製品がB級からS級へと変わったと認知されるようになったきっかけは、アンドロイドだ。中国のスマートフォンは、Google(グーグル)が開発しているオープンソースのモバイルOSであるアンドロイドを採用している。画面の表示を日本語や英語にできるため、マニアが中国メーカー製スマートフォンを導入するようになり、シャオミなどの中国メーカーの製品を趣味仲間に伝えるようになったのだ。
アンドロイドはまた、中国製品がB級からS級に化ける大きなターニングポイントになった。後からソフトに手を加えることができるアンドロイドによって、出荷後でもスマートフォンのOSやアプリを修正したり機能を加えたりするアップデートが容易になった。
さらに、アンドロイドがスマートフォンだけでなく、スマートテレビやカーナビ、ゲーム機、街の広告用大型ディスプレイ、バーコードリーダー、カラオケショップの選曲機械など、さまざまな製品に搭載されるようになった。すると、スマートフォン以外の製品もS級クオリティーへと変わっていった。ソフト面が原因の低品質な中国製品は、アンドロイドが登場してから、目に見えて減っている。
中国は言論の自由を求めるグーグルと敵対している。そのため中国からはグーグルのサイトにアクセスできないし、中国メーカー製スマートフォンにはグーグルマップやグーグルプレイをはじめとするグーグルのアプリは存在しない。
しかし、モノづくりの面では、グーグルは中国に対し多大な影響力を発揮しているといえるだろう。アンドロイドというOSが、後から修正をしていくという製造方法にフィットし、中国のIT製品の本質を大きく変えている。
山谷剛史(やまや・たけし)
ジャーナリスト。1976年生まれ。2002年より中国雲南省を拠点に中国などアジア各国のIT事情について執筆。著書に『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立』(星海社新書)など。
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