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» 2019年05月23日 05時00分 公開

フジ『ザ・ノンフィクション』プロデューサーが明かす「人殺しの息子と呼ばれて…」制作の裏側「視聴率No.1宣言」をする真意(2/5 ページ)

[田中圭太郎,ITmedia]

なぜ「息子」を取材したのか

――「息子」は地元の報道陣も配慮して取材しなかった人です。どうして取材しようと思ったのですか。

 今だから言えることだと思うのですが、きっと本人の中に発信したいという思いがあったんですよ。自分が生きてきた人生を、こういう人間もいるのだということを、知ってほしかったのだと思います。

 最初のきっかけは、本人からの苦情電話でした。北九州連続監禁殺人事件の加害者の1人で、本人の母親である緒方純子受刑者を扱った「追跡!平成オンナの大事件」(2017年6月9日放送)という僕が担当した番組に対して、「なぜ、そんな放送をするのか」「放送するのであれば、なぜ自分にアプローチしなかったのか」と苦情を申し立てられました。最初に電話を受けたとき、理路整然と追い込んでくる息子の声を聞いて、これは24歳の話しっぷりではないと思いました。

phot 小学校時代によく通った公園を歩く「息子」。事件後に生活した養護施設の近所にある

――そこからどのような経緯でインタビューをすることになったのですか。

 本人からはその後もたびたび電話がかかってきました。会話の中で「もし伝えたいことがあれば、知り合いの出版社を紹介するよ」と伝えました。すると「それはいやだ」「大人は信用できない」と拒否していました。その一方で、僕と何度も話しているうちに、一発勝負に出てみようと思ったのではないでしょうか。

――本人を番組の中で「息子」と表現しているのはなぜですか。

 この番組をつくるきっかけになったのが母親である緒形受刑者を取り上げた番組であり、本人の母親に対する印象は、番組の一つの柱です。AさんやBさんといった表現もあると思いますが、あくまでも「息子」でいこうと。それ以外は考えませんでした。仮名をつけるよりも、「息子」でいこうと。ただ、2018年7月にKADOKAWAから出版した『人殺しの息子と呼ばれて』では、「彼」と表現しています。

――「息子」は、母親への憎しみが強かったのでしょうか。

 僕自身、息子の母である緒方純子受刑者から本人に送られた手紙を読むと、衝撃を受けました。ごく普通の女性なんです。なんでこうなってしまったのかと思ったほどです。そんな母親を、息子は理屈ではなくて、好きなんですよ。会いに行くわけですよ。無期懲役なので、緒方受刑者は、出所してくるかもしれません。そのときにどうするのか。一緒に住まないといけないかもしれません。

――取材時間を5時間ずつ2回と決めた理由は。

 彼も仕事がありますし、僕も疲れます。物理的な理由と、心の理由ですね。特にどこまでというのも決めずにやっていて、きょうはこの辺でやめておくか、という感じで切り上げました。

 もちろん不安はありましたよ。1回目を終えて、もう1回本当にインタビューできるのかなとか。

――1回目と2回目の間は、どれくらいおきましたか。

 1週間おきました。家の中はやめてほしい、彼の奥さんにも迷惑がかかるということでしたので、ホテルの部屋の中で聞きました。外で聞くわけにもいきませんから。山に登るシーンがありますが、あそこは誰もいない場所です。リスクを考えて撮影しました。

――張江さんにフランクにしゃべっている場面がありましたが、撮影する過程で変化があったのでしょうか。また被害者に対してはどう思っていたのでしょうか。

 被害者には申し訳ない気持ちでいっぱいだと、何度も言っていました。ただ、この事件は、被害者の多くが身内でしたので、あえて息子の謝罪の言葉は番組の中では使いませんでした。

 フランクなやりとりは、普段からあります。彼とは電話とLINEでやりとりしています。茶目っ気たっぷりなところもあるんです。わざと、僕を心配させるようなことをLINEで打ってきて、こっちがいさめると「ほーら怒った」なんてメッセージが返ってくることもあります。

――親と同じ血が流れていることに息子が「ぞっとする」と言うインタビューがありましたが、言葉が短かったと思います。その理由は。

 いつ自分のリミッターが外れて、同じことをするか分からない、という意味で言ったと思いますが、「ぞっとする」の部分はそれ以上話していませんでした。

phot 「息子」のインタビューはホテルの部屋で2回にわたって行われた

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