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「マツキヨ・ココカラ連合」誕生が意味するもの小売・流通アナリストの視点(4/5 ページ)

» 2019年05月31日 08時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

正念場迎える郊外のドラッグストア

 なぜこうした構図になるかといえば、食品強化型ドラッグストアが、必ずしもドラッグストアとして優れた店を出しているから、というわけでもない。食品強化型タイプは広い店舗を必要とするので、家賃の高い大都市ではなく、空き地がたくさんある地方ロードサイドに出店するため、単純に出店余地が大きく、成長余地も大きいということによる。食品強化型のドラッグストアが地方で支持されているのはドラッグストアとしてよりも、「生活必需品ワンストップショッピング」という利便性が評価されている。

 こうした店では、日々補充ニーズが発生する生活必需品の多くが1フロアにそろっていて、地方の共働き主婦や単身世帯が仕事帰りに車を停めて、短時間で必要なものを一通り買いそろえることができる。そして、その時、化粧品や薬の用があれば、ついでに買う。広い敷地の中、長い距離を歩かなければならない大型総合スーパー(イオンやイトーヨーカ堂の類)で時間をかけるより、店の前の駐車場に横付けし短時間で買い物ができるドラッグストアの便利さが、車社会である地方で共働き、単身世帯といった多忙な消費者の生活スタイルに合致していたのである。

 食品強化型ドラッグストアは各地に存在しているが、その密度には濃淡があり、まだまだ出店する余地が残されているので、当面は売り上げを伸ばしていくだろう。ただそろそろ、各地の食品強化型ドラッグストアも、勝ち組の出店エリアが広がって相互に重複し始めている。例えば、九州から東進してきたコスモス薬品の店舗網が中部地方に到達、有力食品スーパー、バローのグループ企業である中部薬品の縄張りに進出が進んでいる。

 中部地区は北陸から、クスリのアオキやゲンキーも南下進出しており、競争が急速に激しくなっている。当然、中部を基盤とするスギ薬局などの既存の大手企業にも影響が及び、これから中部地区の企業のうち、どこかが脱落することになるだろう。そして、食品強化型最上位のコスモス薬品が、さらに東進を続けて関東の外周部、東日本へと進んでいけば、こうした動きはさらに広がることは確実だ。これからは、地方、郊外立地のドラッグストアにとって正念場になりそうだ。

 こうした動きにあまり影響を受けないのが、首都圏、京阪神中心部のマーケットということになる。広いスペースを必要とする食品強化型ドラッグストアは人口密集地には出店する余地が少ないため、都心部に進出することは物理的に困難だ。となれば、首都圏マーケットトップシェアを確保したマツキヨ・ココカラ連合は、これから迎える地方、郊外でのドラッグストアの決勝戦に直接参戦せずに、都市部での地盤固めに専念できる。他の大手企業に比べ、明らかに有利な立ち位置を確立したということになりそうだ。

phot 首都圏でトップシェアを確保した「マツキヨ・ココカラ連合」は、都市部での地盤固めに専念できる(池袋駅前の店舗、写真提供:ゲッティイメージズ)

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