業界トップシェアを奪われた当時のマツキヨは、凋落(ちょうらく)を懸念する論調も少なくなかったが、同じく都市部で存在感を持つココカラと組むことで、首都圏、京阪神でのトップシェアを確立した。この連合の店舗網には、インバウンドの恩恵を最も享受できるという追い風も吹いている。マツキヨ・ココカラ連合は、これから起こる地方の競争激化に対して、ある意味、高みの見物を決め込むこともできる。
縄張りの外周部で起こる競争の様子を見つつ、脱落する企業に手を差し伸べるというパターンで、優位に業界再編を進めていくことが可能になったのである。ライバル企業は今後、地方での競争で勝ったとしても、負けた側がマツキヨ・ココカラ連合に駆け込んでしまえば、この連合が漁夫の利を得る。ライバルにとっては今後の競争がやりづらくなったことは間違いなかろう。
マツキヨ・ココカラ連合の誕生は、ドラッグストア業界にとっては、マツキヨがトップシェアを奪還といった単純なニュースではなさそうだ。最終段階の入りつつあるドラッグストア業界の再編のターニングポイントだった、と流通史に残る出来事なのかもしれない。
中井彰人(なかい あきひと)
メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。
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