高等師範学校を卒業し、東京文理科大学(のちの東京教育大学、現筑波大学)英文科に進んだ。
米国に学ぶといっても、学ぶものがない。英国ならある。英国も、20世紀文化は面白くない。英国の小学生でも知っていることを、いい年をして勉強するのは滑稽である。
そう考えて、英国の中世文学、ジェフリー・チョーサーを勉強することにした。
「ワン、サット、アプリルレ、ウイズ、ヒズ、シューレス、ソーテ……」
というのが、その代表作、『カンタベリー物語』の冒頭である。現代英語とはまったく違う14世紀の中世英語である。
周囲から、役に立たない中世英語をなぜ、と反対される。不用意に外国の古典にとり組んでも、得られるものは知れている。研究といえるようなものが、できるわけがない。だが、こういうものは、毎日、8時間、9時間没頭していると、おのずから浮き世を忘れる。
チョーサーも、欧州大陸の文化を嗜みながら、英国の国民的詩人になっていったことが、おぼろげながら感じられて深い感銘を受ける。大陸の近くの小島国の生きる道はけわしいことを、チョーサーは言外にあらわした。大変、面白かった。あやうく、20世紀を忘れるほどであった。
外山滋比古(とやま・しげひこ)
1923年、愛知県に生まれる。英文学者、評論家、エッセイスト。お茶の水女子大学名誉教授、文学博士。東京文理科大学英文科卒業後、雑誌「英語青年」編集、東京教育大学助教授、お茶の水女子大学教授、昭和女子大学教授を歴任。専門の英文学をはじめ、言語論、教育論など広範囲にわたり独創的な仕事を続ける。著書には240万部のベストセラーとなった『思考の整理学』(ちくま文庫)をはじめ、『100年人生 七転び八転び――「知的試行錯誤」のすすめ』『思考力』『思考力の方法』『忘れる力 思考への知の条件』『「マコトよりウソ」の法則』(以上、さくら舎)など多数。
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