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サンシャイン水族館をプロデュースした中村元が語る「弱点を武器に変える2つの方法」ショボいけど、勝てます。 竹島水族館のアットホーム経営論(4/6 ページ)

» 2019年06月27日 08時00分 公開
[大宮冬洋ITmedia]
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魚好きではない

――中村さん自身について聞かせてください。魚が大好きなさかなクンみたいな人物を想像していたのですが、まったく違うようですね。

 私はそれほど魚好きではありません。記憶力にも自信がないので魚の名前を覚えられないのです。大学を卒業して、ある縁で就職した鳥羽水族館(三重県鳥羽市)では3年間だけ飼育員をやらせてもらいました。でも、同僚は魚マニアだらけ。展示している魚の名前をすべて言えるのは当たり前の世界です。私は名前を覚えるどころか、異なる魚を見分けることすらできませんでした。

 その頃から私は「弱点を使う」生き方を始めたのだと思います。逆に考えたらいいのです。「同僚たちは魚のことは何でも知っているけれど、客のことは何も知らない。魚の見分けがつかない客の立場になって考えられるのは自分だけ」だと。

 重要なのはその立場で一番になること。私の場合は、「水族館は研究や繁殖をするところではなく、展示をするところ。水族館員は飼育係ではなく展示係」と定義して、展示係として一番を目指しました。当時は誰もそんなことは考えていなかったので、すぐに一番になれました。

――研究や繁殖を目的とした水族館もあるのではないでしょうか。

 あってもいいのですが、研究所のように飼育研究や繁殖を目的とするならば展示をしないほうがいい。窓があるだけで魚や動物にはストレスがかかりますから。だからこそ、展示をする以上はちゃんとお客さんに見てもらわなければなりません。それが水族館の宿命なのです。誰にも見てもらえない展示は展示とは言えません。

――最後に、中村さんのように唯一無二の存在になるためのコツがあれば教えてください。

 自分の長所をそのまま生かせる場所に行かないこと、です。例えば、私は文章を書いたりキャッチコピーを作ったりするのは比較的得意なのですが、出版業界や広告業界に入ったらライバルだらけで勝負にならないでしょう。でも、水族館業界だったら一番になれるかもしれない。学生時代に学んだ統計やマーケティングの知識も同じです。ちょっと知っているだけで水族館業界では一番になれました。長所はライバルがいないところで使うのがコツです。

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