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» 2019年07月19日 05時00分 公開

『ジャンプ』伝説の編集長が語る「21世紀のマンガ戦略」【前編】マシリトが行く!(6/8 ページ)

[伊藤誠之介,ITmedia]

縦スクロールの電子コミックはアクション描写には向いていない

原田: 漫画のデジタル化とひと口にいっても、漫画を紙媒体ではなくスマホやタブレットで読むようになったという、媒体の変化だけを意味しているわけではありません。もっと広い意味で、デジタル化によって、漫画の作られ方や読み方そのものが大きな曲がり角に来ているということだと思います。

 紙媒体の漫画と同じようにスマホでも見開き単位で読んでいる方もいれば、一方では縦スクロールでスマホ用に描かれた漫画を読んでいる方もいる。

 例えば韓国では、“WEBTOON”という縦スクロールで読むように描かれた漫画のほうがすっかり広まっていたりする。このように漫画の作られ方、読まれ方までが変わっていくというのは、紙のページにコマを配置する形でレイアウトされたストーリー漫画の歴史が始まって以来の大変革が起きているということです。若い方はなじみやすいのかもしれませんが、僕なんかはこういうデジタルコミックはどうにも読みづらいんですね。どうしても紙媒体で読んでしまう。

 それでも今後、デジタルコミックの比率がさらに増えていくことは間違いないと思いますし、さらに俯瞰してみればデジタル技術の進展によって、漫画ばかりか映画・アニメ・ゲーム・ラノベなど、そういったものを全部ひっくるめた娯楽メディアの在り方が大きく変わっていくだろうと。つまり出版業界だけでなく、出版社を含めた情報産業全体がデジタルによる大きな変革の嵐の中にあると考えるべきだと思うんです。話を広げてしまいましたけれども、鳥嶋さんとしてはそういう変革の時代に対応して、漫画というものがさらにどう変わっていくと思われますか? 

photo WEBTOONのオフィシャルサイトより

鳥嶋: 実は僕も原田さんと一緒で、電子コミックが読めないんですけど。今、原田さんが紹介した漫画の表現の仕方って、みなさんが持っている電子媒体、縦位置のスマホに準拠した形の漫画の見せ方ですよね。韓国の縦スクロールの漫画も読みました。はっきり言って、僕は面白くない。つまんないなと感じました。

 1つには、このまま本当に縦位置のままなんでしょうか。3年後、5年後にスマホの回線が5Gになって、折りたたみのスマホも紹介されていたりして、画面がどうなるか分からない。この先インフラがどうなるか分からないのに、縦位置の漫画が韓国でヒットしているから日本もそれに合わせるほうがいいとか、単純すぎじゃないかと思います。

 縦位置で見せるのは、僕からすると、紙芝居の連続体だとか、写真を撮ったフィルムのコマが縦に並んでいるのを単に追っているだけなので。推理物や恋愛物の表現には向いているけれど、スピーディーなアクションを表現するのには向いていない表現の仕方なんじゃないかと思います。

 日本の漫画のコマ割りは、手塚治虫さんがディズニーの毎秒24コマのあのスピーディーな動きを、どれだけ紙の画面に定着できるかというところから始めている。コマを割るというのは、途中をカットして、頭の中で想像力で足してもらって見せるという考え方なんですね。人間は見開き全体を見ている中で、1コマ目から順番にコマを追っているんですよ。だから非常に合理的に作られている。

 漫画というのは、フランスにバンデシネ(bande dessinee)、アメリカにアメリカンコミックがありますけど、(日本のような)コマ割りはないんです。ということは、韓国の縦位置で見せる漫画の表現が別に新しいのではなくて、あれは韓国の漫画の表現の仕方の1つなんですね。フランスにもアメリカにも日本とは違う表現があるんだから、単なる韓国漫画の1つの表現方法だと思えばいい。

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