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» 2019年09月24日 08時00分 公開

マザーハウス社長の山口絵理子が語る経営哲学――対立を越えて「よりよい解」を生み出す「サードウェイ」とは (2/5)

[後藤祥子,ITmedia]

マザーハウスの誕生に欠かせなかった「サードウェイ」

 私は高校生の時に、柔道をやっていました。3年間、柔道着を着て戦っていたんです。

 ここから、何がサードウェイかというと、慶應義塾大学に入ったことです。偏差値40を切っているようなところからの慶應義塾大学入学という出来事は、私の中では「体を動かすところから頭を動かすところにシフトする中で、いろいろな世界を見ることができた」という印象がありました。

Photo 高校時代は柔道に励んでいた

 そして大学時代、私は国際協力や開発にとても興味があったんです。途上国と呼ばれる国にいる人たちのために、何か自分が人生を使う手段はないか――と模索しながらJICA(国際協力機構)を受けてみたり、ボランティアの仕事を探してみたりと右往左往していました。

 そんな思いを胸に大学4年の時、ワシントンの米州開発銀行で4カ月、インターンをさせていただいたんです。ラテンアメリカ向けの援助を手掛けるこの機関の志は本当に素晴らしいのですが、私は英語が全然うまくなくて、データ入力しかできませんでした。ただ、援助の金額を入力する中で、少しずつ「実際にそれが現場に届いているのかな」という疑問を持つようになったんですね。

 この疑問に対する私のボスの回答は、「草の根のことは、NGOとかそういった人たちに任せればいい」というものだったのです。「データ分析を重んじて、そこからマクロな政策をつくることが、私たちに求められているミッションです」と。

 ただ、私は、それが本当に現場に届いているのか――例えば教育プロジェクトだったら、「学校を創ることになっているけれど、実際に、そこの卒業生はちゃんと仕事に就けるのだろうか」といったいろいろなことが、気になって仕方がなかったんです。そこで「やっぱり現場に行ってみたいな」と強く強く思ったんです。インターン用の部屋にPCがあったので「アジア最貧国」と検索したら出てきたのが、バングラデシュとの出会いです。

 例えばバングラデシュの電車はこんな感じです。バングラデシュの電車は、屋根の上に乗ってもお金を取られるという、ものすごい仕組みになっている。「車内の3分の1の料金で乗れる」と聞いたときに、ワシントンの整然とした電車とはとても違うなと思ったし、世界ってすごく広いなぁと思ったんです。

Photo 屋根の上にも乗れるバングラデシュの電車
Photo ワシントンの整然とした電車

 1つのサイド(側)にいるだけでは、ものごとの大局は見えないし決められない。「向こう側には何があるんだろう」と想像することが、サードウェイのファーストステップだと思うんです。

 私は「ワシントンにいながら政策をつくる」のではなく、反対側まで想像してみたかった。そして実際に足を踏み入れたバングラデシュでは、さまざまな人が私にたくさんの学びをくれました。

 私自身は、「ただ、旅行しただけで終わるのでは、学んだことにならない」と思って、バングラデシュの大学院に入学しました。ブラクユニバーシティという大学院です。ただ、私が学んだことは大学院の中にはあまりなかったんです。

 日常の生活の中では、人の命が軽いなと思うような事件がたくさんあり、通学路でバスが燃えているようなこともあるんですが、それでもなかなか人が動かない。そんな“ここでしかできない”経験を経て、ワシントンとバングラデシュという両極を知ったことが、マザーハウスの経営につながっていると思っています。

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