大手金融機関の誘いに乗って「金融デリバティブ商品」に手を出した食品卸会社の末路あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(10)(3/3 ページ)

» 2019年11月06日 05時00分 公開
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本業の余力を残したままで倒産

 昌立物産は、取扱商品の充実度や従業員の商品知識の豊かさ、きめ細かい物流によって顧客から強い信頼を獲得しており、リーマン・ショック後に売上は減少するものの、営業利益は手堅く維持していた。しかし、知識不足のまま資金を投入したデリバティブ取引で大損失を出し、借金がかさんだことが本業の足を引っ張り、倒産に追い込まれた形だ。

 同社にデリバティブ取引を持ちかけたのも金融機関、そしてリスケ要請などを断り、最後通牒(さいごつうちょう)をつきつけたのも金融機関だ。しかし、だからといって、金融機関にすすめられるままリスクの高い投資を行ったのは、経営者の責任といわざるを得ない。

 取引先からは、「本業の余力を残したままでの倒産で残念だ」という声がある反面、「金策も含めて企業経営。銀行に潰されたという主張は責任逃れだ」という厳しい指摘もあった。企業にとって、いかに資金繰りするかはつねに課題だ。昌立物産の事例は、金融機関との付き合い方など金策の重要性とリスクを改めて提示している。

著者プロフィール

帝国データバンク 情報部

1900年創業の民間信用調査会社。国内最大の企業情報データベースを保有。帝国データバンク情報部は、中小企業の倒産が相次いだ1964年、大蔵省銀行局からの倒産情報提供に応じるかたちで創設。情報誌「帝国ニュース」の発行、「全国企業倒産集計」などを発表している。 主著に『なぜ倒産』(日経BP社)『御社の寿命』(中央公論新社)『あの会社はこうして潰れた』(日経BP社)などがある。


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