さて、高い安いという感覚の話はおいて、利益がどうなっているかを見てみよう。
マツダの2020年3月期第2四半期決算を見ると、かなり厳しい数字が並んでいる。売上高、営業利益、経常利益、税引き前利益、当期純利益、売上高営業利益率の全てがダウン。特に売上高利益率1.5%は正直瀕死の重傷に見える。
直近第二四半期の財務指標。各数字は軒並み昨年割れ。売上高営業利益率は1.5%まで落ち込んだ
いったい何でこんな事になったのかは別の表を見ると見えてくる。営業利益変動要因だ。筆者はこのページを見て驚いた。ベースの数字は前年の利益298億円にプラス312億円。つまり商品そのもの利益は2倍に増えている。販売台数がダウンしているにもかかわらず利益が2倍というのは内容が劇的に向上しているということだ。
直近第二四半期の利益変動要因。販売費用の抑制と単価改善により、商品そのものの利益は倍増したが、主に為替要因によって減益となっている
自動車メーカーの利益を左右する主要因は、おおむね5つある。台数(販売台数)、構成(単価)、販管費(値引き)、品質関連費用(リコールなど)、為替だ。多くの決算書では台数・構成・販管費をひとまとめにした上で、利益変動要因を説明する。マツダの場合それが図表の左側2つ。前年度の利益と本年度のベースとなる利益だ。グローバル販売台数が8%ダウンしているという結果を見れば、これが倍増する理由は消去法で見れば「構成」と「販管費」のどちらか、または両方にあることになる。
その部分の解説コメントには「販売費用の抑制と単価改善の効果」と書かれており、多くの場合、影響が大きい順に書かれる。つまり商品の販売に関わる諸費用(販管費)が減っている。マツダの宿痾(しゅくあ)ともいえた値引きが激減しているということだ。なのになぜ財務指標では営業利益が減っているかといえば、375億円という凄まじい為替差損である。
自動車を売るビジネスの本質 マツダの戦略
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Mazda3に見るマツダの第7世代戦略
北海道上川郡剣淵町のテストコースで開催されたマツダの雪上試乗会にMazda3が用意された。筆者はすでに北米での試乗会で運転して、十分以上に驚いた後なのだが、さらにもう一度驚かされた。
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