しかしながら、同一成果同一賃金の導入は、同一労働同一賃金以上に難しい面があります。例えば「何をもって同じ成果と見なすか」は課題です。同一労働同一賃金においても、何をもって同じ職務と見なすかが難しいのと同様です。成果を明確に定めて比較するためには、誰もが分かるように「いつまでに」「何を」「どのレベルで」仕上げなければならないかを確定する必要があるでしょう。
また、かつて成果主義と呼ばれる評価制度が話題になったものの、機能しなかった苦い過去もあります。さらに、成果だけでドライに給与を決めてしまうと、プロスポーツ選手や芸能人のように、収入の浮き沈みが激しく働く人の生活が不安定になってしまう懸念もあります。
それでも、同一成果同一賃金の考え方を目線の先に置いておくことで、同一労働同一賃金だけでは解消できない課題を克服しようとする道標(みちしるべ)にすることができます。
例えば、生活のための最低保証として同一労働同一賃金をベースとした上で、早退、欠勤時の補填(ほてん)やプラスアルファとしての評価に同一成果同一賃金の考え方を導入するような、ハイブリッド方式も考えられます。
このようなことをすると「人件費が増えてしまうじゃないか!」と思う人もいるでしょう。しかし、増えるとしたら「成果を出した分」の人件費です。会社と従業員との間で、出してほしい成果の内容をしっかりと合意できていれば、その人件費は成果が出た後に支払われるわけですから、むしろ外れのない確実な投資だと言えます。
もし同一成果同一賃金の考え方を上手に導入することができれば、働く側にとっても雇う側にとっても、大いにメリットがあるのではないでしょうか。働き方改革が進められていますが、同一労働同一賃金をその最終ゴールと見なしてしまうことには違和感があります。雇用労働分野におけるより多くの課題を解決するためには、その先に、同一成果同一賃金を見据えて改革を進める必要があると考えます。
1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業。テンプスタッフ株式会社(当時)、業界専門誌『月刊人材ビジネス』などを経て2010年株式会社ビースタイル入社。2011年より現職。複数社に渡って、事業現場から管理部門までを統括。しゅふJOB総研では、のべ約3万人の“働く主婦層”の声を調査・分析。研究・提言活動では、『ヒトラボ』『人材サービスの公益的発展を考える会』を主宰し、厚生労働省委託事業検討会委員等も務める。NHK『あさイチ』など、メディア出演・コメント多数。男女の双子を含む4児の父。
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