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働き方改革の失敗にはパターンがある 試行錯誤の末に見えてきた「変革に欠かせない」5つのポイント働き方改革を阻む「抵抗」「不安」「失敗」との戦い方(4/4 ページ)

» 2019年12月25日 08時00分 公開
[後藤祥子ITmedia]
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働き方改革が進まない会社は「やらないことを決められない」

沢渡: もう1つ、働き方改革が進まない会社の傾向として顕著なのが、「昔、作ったルールが全て」という考え方ですね。変化を嫌って「昔からの仕組み」を「今の時代に合った仕組み」に変えられず、“成果が上がっていないにもかかわらず仕事をした気になれる”仕事ごっこを増やしている。すると、優秀な人材は辞めていくし、いいコラボレーション相手にも恵まれないですよね。

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小川: 実は、ノキオスタイルの一つの考え方として「やらないこと宣言」をしているんです。「社内資料は印刷しない」「テレアポはしない」といったようなことです。

 「このルールは既に意味を成さなくなっている」「このルールは成果に直結していない」というものが「昔からある」という理由だけで残っているのはおかしな話ですよね。

 例えば前職で「営業はテレアポが基本だ」といわれてきたのですが、僕としては成果が上がっている実感がないし、何より疲弊するばかりだったんですね。だから思い切って「テレアポを辞めよう」と宣言したんです。

 すると面白いことに、「それをやらないなら、代わりに何をやって成果を出すか」というところに頭を使うようになる。すぐには出てこないかも入れないけれども、考えるようになるんです。

 もちろん、ちょっと油断すると、ふと「このリストに電話すればいいじゃない」という悪魔のささやきが聞こえてくる(笑)。でも、それを振り払って1週間くらい考え続けると「こんなチラシをやってみたらどうだろう」「みんなの名刺を集めて、『新サービスを作ったので話を聞いてもらえないか』とメールを配信してみたらどうだろう」とか、いろんなアイデアがわいてきたのです。

 試しにメールを配信してみたら、かなりの反応があって驚きました。「テレアポをする」という、旧来からのルールに縛られていたら、こんな発想には至らなかったですよね。

 それ以来、おかしいと思ったルールは「やらないこと宣言」に載せて、代替案をみんなで考えるようになりました。

沢渡: それはとてもいいやり方ですね。私の著書、「仕事ごっこ」の第8話に「おはなしをきいてもらえない、すずめさん――いまどきテレアポのみで営業をかける人たち」という話があるのですが、「やめることを決められない」のは、世の中の働き方改革がうまくいっていない企業の負けパターンの本質だと思います。

 「やめることをしない」のも大きな問題ですが、さらに厄介なのが、「やめるべきなのに残っている仕事」というのは、まさに「仕事してる感」がある――ということですね。

 本来ならやめることを決断し、新しい方法やプロセスで実行するべきなのですが、新しいことは覚えるまでには時間がかかるし、やり方も今までとは異なるから、心理的に逃げたくなるんです。だったら、今までのやり方で仕事をしていたほうが気が紛れるし、安心感があるし、評価も下がらない――ということで、やめることができないんです。

 変化するためのポイントは2つあって、1つは「やめることを決める」こと。もう1つは「やめたあと、どこで価値を出していくか」を、組織の中できちんと考えることです。そうしないと社員の中に、「この仕事がなくなったら、自分の居場所がなくなるんじゃないか」という不安感と無力感がわいてきてしまいます。

 ここでは小さな成功体験を積み重ねることが大切です。NOKIOOさんの例でいえば、「テレアポをやめてメールマーケティングをやってみたら反応がよかった」という小さな変化がスタートですよね。このような成功体験を積んでいくと、人は変化のファンになって、新しいやり方に自らシフトしていくようになります。

 このサイクルをいかに回せるかが「すべらない働き方改革」なのだと思います。

後編に続く】

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