「体重制限だけで人が健康にならないのと同様、労働時間を圧縮するだけでは企業の健全な経営につながらない」――。リクルートマネジメントソリューションズ(MS)の藤澤理恵氏(組織行動研究所 研究員)は、3月14日に開いた会見でこう語った。
働き方改革関連法の施行が4月に迫り、多くの企業は「時間外労働の上限規制」や「年次有給休暇の取得義務付け」への対応を迫られている。同社の調査でも「労働時間の適正化など、法改正や世論の変化への対応」(85.0%)、「ワークライフバランスへの配慮など、従業員の生活の質的向上」(70.0%)などに注力する企業が多いとの結果が出た。
だが、こうした施策が目に見える効果を生むケースは少なく、改革を進めている企業のうち「従業員満足度が向上した」は16.8%、「メンタルヘルスを損なう従業員が減った」は8.7%、「商品開発力などがアップした」は3.7%にとどまった。
結果を踏まえ、藤澤氏は「働き方改革をやってよかった、と考える企業は少ない」と明かす。
なぜ働き方改革は効果が出ず、「やってよかった」と実感できないのか。藤澤氏は「(経営層などが)『残業をしてはいけない』などという“型”を押し付けているだけで、仕事内容や評価制度を変えない企業が多いためだ」と指摘する。
残業を禁止したり、会議の効率化やペーパーレス化などを進めたりといった取り組みを行うのは確かにトレンドとなった。だが、社員が生産性の高い業務に集中できるようにビジネスモデルや戦略自体を変えたり、顧客との関係性を見直したり、時間当たりの生産性や成果を基準にした評価制度を導入したり――といった“深層部”まで及ぶ改革に踏み込んでいる企業はあまりないというのだ。
そのため社員の理解度も低く、「残業代減少への懸念などから、残業が規制されても早く帰りたがらない人が出てくる。仕事を(定時よりも)早く終わらせるスキルを身に着けた人に追加の仕事がアサインされるため、優秀だからこそ不公平だと感じる人もいる。上司が部下の仕事を巻き取って『早く帰れ』と指示するだけの状態になり、上司の負担が増える一方で、部下が仕事の面白さや成長を実感できなくなる場合もある」(藤澤氏)という。
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