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残業時間は半減、社員一人当たりの売上は15%増――「働きがい重視の改革」が結果につながる理由働き方改革を阻む「抵抗」「不安」「失敗」との戦い方(4/4 ページ)

» 2019年12月26日 08時00分 公開
[後藤祥子ITmedia]
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働き方改革の結果、NOKIOOはどう変わったのか

沢渡: ノキオスタイルを貫いた結果、NOKIOOはどう変わりましたか。

小川: 1つは採用面での変化ですね。母集団の形成力が高まりました。1カ月に10件前後の人材エントリーが来るようになり、Lunch Sessionを通じて、これまで約60人の応募がありました。また、働き方に共感するUターン人材も3人、入社しています。

 2つ目は、プロジェクト型の組織を作りやすくなったことですね。社内の情報を可能な限りオープンにしているので、今、会社が何をしようとしているのか、誰がどんなプロジェクトに参加しているのかが分かるんです。

 そのため、新しいプロジェクトを立ち上げるときも、そのプロジェクトが起こった背景や必要なスキル、誰がその分野の適任なのかがすぐ分かるので、チームを作りやすい。また、プロジェクトが難航している場合でも、他のメンバーが助けに入ったりするなど、部門を越えたフォロー体制ができてきています。

 3つ目は生産性の向上です。直近1年の平均残業時間が13時間から7.4時間に減ったにもかかわらず、社員一人当たりの売上高は15%以上、上がっています。

 そして一番大きな変化は、社員ひとり一人が仕事を「自分ごと」として捉えるようになり、自走し始めたことです。

 働き方改革を推進する上で、最初にその流れを社内に作っていくのは、やっぱり経営の仕事なんですね。反発や抵抗も多く、最初の3〜4年は「重たい石をぐっと押しているような感覚」だったのですが、最近では、僕が石を押さなくても転がり始めたような感覚があります。

 例えば、日報を一つとっても、昔は単なる報告だったものが、今では関連する部署への提案や、よりよい仕事の進め方をするためのアイデア、生産性を高めるための方法などが盛り込まれるようになりました。これは社員の中に、「自分の頭で考え、その結果をオープンにする」という回路ができてきた証拠であり、その積み重ねが数字につながっているのだと思います。

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沢渡: 働き方改革は、「今までの常識を疑う風土改革」なので、1カ月や2カ月、1年くらいでできるわけがないんです。そこは経営陣やリーダーが覚悟を決め、我慢してやり続ける必要があります。

 なかなか成果が見えない中で続けるには、「成果」より「変化」を見ることが重要だと思うんです。考え方を変え、やり方を変え、仕事ごっこを辞めることで、スタッフの表情が明るくなったり、会話が増えたり、意見が出るようになったりするのは「変化」ですよね。この変化の積み重ねが「成果」につながっていく。

 企業が何十年も続けてきたレガシーな文化は、そう簡単には変わりません。その中で小さな成功体験を作り続け、スタッフに「変わるといいことがあるんだ」と実感してもらうことで、「変化のファン」を増やしていくしかないんです。

小川: 働き方改革は、「経営陣が覚悟を決める」ことにつきるのかもしれません。「元のやり方に戻そうか」「戻して楽になりたい」という気持ちと戦いながら「前に進めば良くなっていくはず」と信じて進むしかない。キツくてしんどいですが、そうやって変えていくしかないのだと思います。

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