攻める総務

オフィスワークとリモートワークを融合「マーブルな働き方」へ ミクシィの新型コロナ対応6カ条を制定(1/2 ページ)

» 2021年01月08日 07時00分 公開
[人事実務]

 本記事は『人事実務』(2020年12月号)「働き方改革の現場から」より「ミクシィ オフィスワークとリモートワークが混ざりあうマーブルな働き方へ」を一部抜粋、要約して掲載したものです。当該号の詳細はこちらからご覧いただけます。

新しい驚きを提供し続ける

 SNS「mixi」を運営するミクシィ。創業から23年を迎える、IT企業の雄だ。コミュニケーション創出カンパニーとして、mixiの他にもスマホアプリ「モンスターストライク」「家族アルバム みてね」など、多くのコミュニケーションサービスを提供してきた。

 同社は2020年7月に、出社とリモートワークを選択する働き方「マーブルワークスタイル」を発表した。感染対策としての在宅勤務だけではなく、コロナ禍以降の働き方を視野に入れ、より高い生産性を実現するために出社とリモートワークが混在する働き方を宣言したものだ。今回は、人事本部長の柳本修平さんに、ミクシィのマーブルワークスタイルをはじめ、コロナ対応や働き方の展望について伺った。

(※)1月8日時点、新型コロナウイルスの首都圏における感染拡大、政府の緊急事態宣言に関する現下の状況を考慮し、週4回のリモートワーク推奨の働き方に切り替えている。

photo 20年3月に移転した新オフィスのオープンミーティングスペース

 同社の社風について、柳本さんは「皆が自由、活発に意見が飛び交う」と表現する。会社が統制するよりも、各自が主体性をもって動く方が、全体の生産性が上がるという考え方だ。

 「『ユーザーサプライズファースト』という理念をもっています。期待を超える。それもユーザーが驚く形で届けるということは、決して上司ファーストではないし単なるユーザーファーストでもありません。これを実現していくためには、一人一人が自分で考えることが大事になります」

 マーブルワークスタイルもこの考え方が土台になっている。

<会社概要>

 ●社名:株式会社ミクシィ

 ●設立:1999年6月

 ●資本金:9698百万円(2020年3月末現在)

 ●事業内容:デジタルエンターテインメント、スポーツ、ライフスタイル

 ●従業員数:1106人(連結、正社員のみ、2020年9月末現在)

 ●本社: 東京都渋谷区渋谷2-24-12 渋谷スクランブルスクエア36F

ミクシィ社の新型コロナ対応

 まず、同社のコロナ対応について概観しよう。

 20年1月から情報収集を開始、2月中旬に「新型コロナ対策委員会」を設置した。柳本さんが委員長を務め、委員長決裁で素早く判断を行える体制を整えた。手指消毒用アルコールや手洗い用せっけんなど衛生用品の配備と並行して、コアタイムの変更、時差出勤の推奨、リモートワークの導入を進めていった。リモートワークの導入にあたっては、「全社リモートワークテスト」も実施し、課題を抽出している。

 テストからは、椅子やモニターなど、環境・設備による作業効率の低下が懸念されたため当面の自宅作業環境構築のために、2万2000円を上限に費用を支給。対象となる物品は、外付けモニターや自宅用のマウス、キーボード、机や椅子など。購入した物品は個人所有となる。社内の備品も希望者に配布した。在宅勤務が長引くとともに、社員のメンタルケアも大きな課題になる。マネジメント層向けのメンタルヘルス対策として、ミーティングや1on1 で部下の変調にいち早く気付くことができるようポイントをまとめた「ラインケアのすすめ」、従業員向けに「リモートワーク中のセルフケア」や「オンラインコミュニケーションのひと工夫」など、情報発信を行っている。

出社とリモートを融合した「マーブルワークスタイル」

 20年7月に発表されたマーブルワークスタイルの具体的な内容は、コアタイムの縮小(10〜15時から12〜15時へ)と、出社を基本とした週3日上限のリモートワークだ(※20年12月時点では、妊娠中、基礎疾患、後期高齢者(全て、同居する家族も含む)に該当する社員にフルリモート勤務を認めている)。

 社員に向けたガイドライン「マーブルワークスタイル6カ条」からも、オフィスワークとリモートワークが混ざり合うワークスタイルの在り方が伺える。このガイドラインはさらに詳細化したものがあり、「Web会議をする場合は、人数に関わらずカメラをONにする」や「指さしや『あれ、それ』を多用しない」といった、在宅勤務者と出社勤務者が混在する環境での工夫を共有している。

photo

 当初は7〜9月まで試験運用を行う予定だったが、発表後に都内で感染の再拡大がみられたため8〜9月は週4日のリモートワーク推奨を継続しており、具体的に始動したのは10月からとなる。

 「マーブルワークスタイルは、出社と在宅でどちらがよい仕事ができるかを軸に各自が選ぶことが趣旨ですが、これまでは感染防止の観点から在宅勤務を行った例も多く、働き方の選択肢としての運用はこれからになります」

 この先数カ月間をテスト期間として、最適な形を模索していくが、すでに見えてきた課題もある。例えば社内調査からは家庭環境(同居人の有無)や部屋の広さなど、在宅勤務に適さない環境も少なくないことが分かった。

 「モニターを複数使う人も多いのですが、部屋の広さによっては十分な大きさの机や椅子を置けないこともあります。家に小さい子どもがいる、パートナーも在宅勤務をしており音声での会議参加がしづらいといった例もありました」

 会社でも環境整備の支援をしているが、会社がオフィスで提供する利便性と比較すると制約はある。

出社を基本とする狙い

 これまで同社では、イノベーション創発などの狙いから対面コミュニケーションを重視した環境整備を行ってきた。渋谷駅から3キロ以内に住む社員へ月3 万の手当もその一環だ。また、オフィス内の環境については、「はたらく環境推進本部」がハード面、ソフト面の両方から整備を行っている。

 オフィス設計にも、社員同士のコミュニケーションが生まれる工夫が取り入れられており、例えばカフェやコンビニがある休憩用スペースは「コラボレーションエリア」と名付けられ、ランチ会やミーティング、イベント開催ができるようプレゼンテーションシステムも完備している。

photo 社員食堂やカフェ、コンビニなどがあるコラボレーションスペース

 マーブルワークスタイルの発表時に注目された点の一つが、出社を基本とすることを明言したことだ。

       1|2 次のページへ

© 人事実務