マーケティング・シンカ論

SNS活用から紐解く、コロナ時代の企業コミュニケーション企業SNS「中の人」がいま考えるべきこと(3/6 ページ)

» 2020年07月15日 05時00分 公開
[天野彬ITmedia]
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コロナを受けた、企業の取り組み事例

 実際、SNSにとどまらず、企業に対する見方がポジティブに変わるような取り組みが、さまざまな支援活動のかたちをとりながら数多く展開されています。個別の取り組みや企業名を出すことは控えますが、大きく分けると5つの方向性に分類できます。

(1)物資提供、企業の強みを生かした経済的支援など

 支援を必要とする人々に、企業が自社の商品などを配布する動きが見られました。また、家での時間を充実させるために、組み立てて遊べるキットを配布するようなものもよく見られました。その他、ホテルが感染者受け入れを発表するなどの動きも注目を集めています。また、基金の設立や事業支援などもここに含めて考えることができるでしょう。

(2)サービス、コンテンツの無料公開(フリーアクセス)

 従来有料バージョンで提供していた商品、映像や音楽などのサブスクリプションサービス、あるいは過去の秘蔵コンテンツなどを無料公開するなどの動きも今回を機に進みました。特にリモートワークツールを提供する企業なども迅速にサービスの無償提供を行っており、企業理念と合致した素晴らしいアクションだったと思います。また、レシピ情報などは、おうち時間の中での家庭でのニーズを大きく満たしています。

(3)必要なものをつくるイノベーション

 このコロナ時代の「ニューノーマル」に対応する形で、新しい業態にチャレンジする取り組みも活発化しています。メーカーが技術力を生かしてマスクや防護服、人工呼吸器をつくる動きが、代表的です。その他、メッセンジャーサービスが健康調査を行うことや飲料メーカーによるオンライン飲み会用のメニュー開発や配達の仕組み整備なども含まれるでしょう。SNSなどさまざまなインターネットサービスが、お店や団体への支援・寄付が簡単にできるような機能を提供していたものも、ここに属するものとして考えられると思います。

(4)情報提供、啓発活動

 新型コロナに関する、予防のための有益な情報の提供、それについての啓発活動も盛んに行われました。メーカーが布マスクの洗い方を伝える動画を出すなど、未知の感染症への正しい知識を伝えることの重要性を筆者も感じました。

 また、ある居酒屋チェーンは、「いまは来店しないで」と呼びかける勇気あるコミュニケーションが評価されていました。「#うちですごそう」「#StayHome」の活動も盛んで、著名人も多く参加したことも記憶に新しいでしょう。ボトムアップの運動としては、「#家にいるだけで世界は救える」というムーブメントがTwitterから火がつき、ユーザーの中で広まっていったことも、現代的な動きとして捉えられます。

(5)参加のための仕組みづくり

 「(4)情報提供、啓発活動」から派生するものとして、生活者を巻き込む形でのコミュニケーションも活発化しました。星野源さんの「うちで踊ろう」はさまざまな人が動画を投稿し、いくつかの論争も生みながら、広く拡散されました。(4)と異なるのは、より楽しさを志向し、双方向的な参加型の色彩をもっていることです。

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