マーケティング・シンカ論

SNS活用から紐解く、コロナ時代の企業コミュニケーション企業SNS「中の人」がいま考えるべきこと(5/6 ページ)

» 2020年07月15日 05時00分 公開
[天野彬ITmedia]
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ユーザーが参加する仕組みをうまく作ったポカリ

 こうした流れを踏まえると、広告は「広く伝える」ということだけでなく、「コミュニケーションを社会へと広げる」ということにも目を向ける必要があるでしょう。2020年4月に公開された大塚製薬の「ポカリスエット」の広告施策を例に挙げて考えてみます。YouTube上では、テレビで放映されたバージョンだけでなく、さまざまなバージョンが展開されており、その中の「ポカリスエットCM 『ポカリNEO合唱』篇 60秒」では、次のように施策を紹介しています(ぜひ動画を見てみてください)。

今はみんなで会えないけれど、歌は歌える。

新ヒロインの汐谷友希さんと、97名の中高生たちが、

自分の場所で、自分らしく、ひとつの歌を合唱しました。

2020年春、「渇きを力に変えてゆく。」

動画が取得できませんでした

 ポカリスエットは、ここ数年のブランドコミュニケーションを、若者を応援することにフォーカスさせていました。ポカ写、ガチダンス、そして今回はNEO合唱。一人ひとり別々の場所で歌う高校生が、遠隔からビデオでつながりあい一つのハーモニーへと昇華されていく表現は、そのクリエイティブの高い質も伴って大きな反響を呼びました。ビデオでつながりあうという設定がいまの世の中に寄り添ったコミュニケーションであることを伝えていますし、若い人たちを応援するというブランドの目指すところもちゃんと色濃く反映されていて、とても素晴らしいクリエイティブだと筆者自身も感じました。

 また、表現としての水準に加えて、TikTokでもUGC(User Generated Contents、企業などではなく、一般のユーザーが発信するコンテンツのこと)施策を実施しており、文字通りみんなで合唱するための「参加の仕組みづくり」を実現しているのです。

 動画の最後のシーンでは、皆が一斉にカメラを空に向けると、それが青い背景となってポカリスエットのロゴが完成します。YouTubeに公開されているメイキング動画を見ると、参加した中高生達が、「同じ空の下にいること」を確認するために家のベランダなど屋外に出ていることが分かります。つまり、このシーンは、「離れていてもつながっている」ということの象徴でもあるのです。

動画のラストシーン(出所:YouTube「ポカリスエットCM 『ポカリNEO合唱』篇 60秒」)

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