土肥: ミズノのこれまでの販路といえば、スポーツショップが中心だと思うんですよね。しかもその業界では歴史も知名度もあるので、お互い顔と名前が一致した状態で、取引が続いている。しかし、ワーク事業は新しい取り組みなので、分からないことや気付きもたくさんあるはず。例えば、建設業界などで働いている人たちの声を聞いて、「お、これは商品化できるのでは?」といったケースもあったのでは?
石田: 建設だけでなく、建築、運輸、病院、鉄道などさまざまな業界を回っていく中で、いろいろな声を聞きました。例えば、とある会社で働く人から「耐切創手袋をつくってくれませんか」という依頼がありました。
土肥: 刃物を使って作業する際に、手を切ってしまう恐れがあるので、それを防ぐための手袋のことですよね。でもホームセンターなどでも、耐切創手袋は売ってますよね。
石田: ご指摘の通り、市場にはたくさんある。ただ、ラバーコーティングしているので、ものすごく分厚いんですよね。分厚いと、どうなるのか。狭いところで作業するとき、邪魔になるので手袋をとってしまうんです。例えば、配線作業のときには狭いスペースで作業することが多く、しかもカッターを使う。しかし、手袋をとってしまうと、手を切ってしまうかもしれない。
実際、そうしたケースでケガをする人が多かったので、「薄いモノをつくってほしい」という依頼がありました。で、実際につくって、現場で働く人たちに使っていただくことに。ただ、話はそれだけで終わらずでして。清掃業務をしている人たちからも「欲しい」といった声がありました。清掃員の方たちは、ゴミを取り出すときにゴミ箱の中に手を入れますよね。そのときに、ガラスの破片などで手を切ってしまうことがあるそうです。
土肥: 「この業界で働く人たちのために……」と思ってつくったモノが、想定と違った人たちにもウケているわけですね。ただ、ひとつ気になることが。現場に足を運んで「ミズノさん、こんな商品つくってよ〜」といった声を聞いて、商品化する。そうした声って、ミズノだけに届いているわけではないと思うんですよね。他社にも同じような相談があるにもかかわらず、なぜ他社はつくらず、ミズノはつくれたのでしょうか。
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