さて、筆者は2020年は日本車のビンテージイヤーであると主張しているが、まずはその前編。2020年を代表するクルマとして、トヨタ・ヤリスの3兄弟である、ヤリス、ヤリスクロス、GRヤリスを取り上げる。
ヤリスが何を成し遂げたのか? もちろんTNGAによる運動体としての大幅なレベルアップはそれ自体を高く評価するのだが、それ以上に自動車の未来を切り開いたことはより高く評価すべきだろうと思う。運動体としての話は過去記事を参照していただきたい。
まずはヤリス最大の偉業は何かといえば、パリ協定をベースに定められた欧州のCAFE規制に対しての大きな前倒しクリアを挙げるべきだろう。
CAFE規制がどういう規制値になっているかというと以下の通り。ちなみに厳密なことをいうと、25年と30年の燃費は21年のメーカー毎達成ベースからそれぞれ削減比率を示されるので、各社の21年の数値によって上下に振れる。21年に基準値ぴったりならば下の数値になるはずである。しかもいまだに異論が渦巻いており、修正される可能性も含んでいるから、まあルールそのものがいろいろ怪しいことはひとまずおこう。目安としてこのあたりということだ。
- 2015:135g/km
- 2021:95g/km
- 2025:81g/km
- 2030:59g/km
現時点で、21年の規制をクリアできそうなのはトヨタとPSA(プジョー・シトロエン)だけである。どちらもEV化に熱心だと思われている会社ではないところが面白い。さてトヨタのこの結果について、ここで取り扱うCO2排出量は企業平均なので、ヤリス・ハイブリッド一台がクリアしたところで仕方がない。オールトヨタが販売する全車種を加重平均して、その平均値でクリアしなければならない。
そういう場面で大事なのは、販売台数の多いクルマのCO2排出量をいかに減らすかなのだが、販売台数が多いクルマというのは得てして安価なクルマである。つまりCO2排出量が少なくとも、値段が高くて台数が売れないと、環境貢献度は上がらない。
- ビンテージイヤーに乗った特筆すべきクルマ(後編)
日本のクルマはとても良くなった。筆者が自動車雑誌の出版社に入ったのは1987年で、まだバブルの真っ最中。それから33年、長い月日をかけて、日本車は世界のクルマとトップを競えるようになった。後編で扱うクルマは、トヨタ・ハリアー、スバル・レヴォーグ、マツダMX-30の3台である。
- GRヤリス 一番速いヤツと一番遅いヤツ
GRヤリスの試乗会は今回が3度目である。そして年の瀬の足音が近づいてきた今頃になって、ようやく公道試乗会に至ったわけである。多分GRヤリスが欲しいという大抵の人には、RZ“High performance”がお勧めということになるだろう。こういうクルマは、買ってから後悔するくらいなら全部載せが無難だ。
- ヤリスの何がどう良いのか?
ヤリスの試乗をしてきた。1.5リッターのガソリンモデルに約300キロ、ハイブリッド(HV)に約520キロ。ちなみに両車の燃費は、それぞれ19.1キロと33.2キロだ。特にHVは、よっぽど非常識な運転をしない限り、25キロを下回ることは難しい感じ。しかし、ヤリスのすごさは燃費ではなく、ドライバーが意図した通りの挙動が引き出せることにある。
- 「国民車」ヤリスクロス
原稿を書く側にしてみると非常に困るクルマだ。何か得意な芸があって、そこに集中して説明すれば伝わるというクルマではなく、オールラウンダー型の車両なので良いところを挙げていけばキリなく、それを全部書いていては冗長になる。かといって端折ると正確ではなくなる。正直だいぶ困っているのだ。
- ヤリスのトレードオフから考える、コンパクトカーのパッケージ論
ヤリスは高評価だが、満点ではない。悪いところはいろいろとあるが、それはパッケージの中でのトレードオフ、つまり何を重視してスペースを配分するかの結果だ。ヒューマンインタフェースから、なぜAピラーが倒れているかまで、コンパクトカーのパッケージに付いて回るトレードオフを、ヤリスを例に考えてみよう。
- ヤリスとトヨタのとんでもない総合力
これまで、Bセグメントで何を買うかと聞かれたら、マツダ・デミオ(Mazda2)かスズキ・スイフトと答えてきたし、正直なところそれ以外は多少の差はあれど「止めておいたら?」という水準だった。しかしその中でもトヨタはどん尻を争う体たらくだったのだ。しかし、「もっといいクルマ」の掛け声の下、心を入れ替えたトヨタが本気で作ったTNGAになったヤリスは、出来のレベルが別物だ。
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