クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ビンテージイヤーに乗った特筆すべきクルマ(前編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/6 ページ)

» 2020年12月14日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 さて、筆者は2020年は日本車のビンテージイヤーであると主張しているが、まずはその前編。2020年を代表するクルマとして、トヨタ・ヤリスの3兄弟である、ヤリス、ヤリスクロス、GRヤリスを取り上げる。

ヤリス・ハイブリッド

 ヤリスが何を成し遂げたのか? もちろんTNGAによる運動体としての大幅なレベルアップはそれ自体を高く評価するのだが、それ以上に自動車の未来を切り開いたことはより高く評価すべきだろうと思う。運動体としての話は過去記事を参照していただきたい。

 まずはヤリス最大の偉業は何かといえば、パリ協定をベースに定められた欧州のCAFE規制に対しての大きな前倒しクリアを挙げるべきだろう。

 CAFE規制がどういう規制値になっているかというと以下の通り。ちなみに厳密なことをいうと、25年と30年の燃費は21年のメーカー毎達成ベースからそれぞれ削減比率を示されるので、各社の21年の数値によって上下に振れる。21年に基準値ぴったりならば下の数値になるはずである。しかもいまだに異論が渦巻いており、修正される可能性も含んでいるから、まあルールそのものがいろいろ怪しいことはひとまずおこう。目安としてこのあたりということだ。

  • 2015:135g/km
  • 2021:95g/km
  • 2025:81g/km
  • 2030:59g/km

 現時点で、21年の規制をクリアできそうなのはトヨタとPSA(プジョー・シトロエン)だけである。どちらもEV化に熱心だと思われている会社ではないところが面白い。さてトヨタのこの結果について、ここで取り扱うCO2排出量は企業平均なので、ヤリス・ハイブリッド一台がクリアしたところで仕方がない。オールトヨタが販売する全車種を加重平均して、その平均値でクリアしなければならない。

 そういう場面で大事なのは、販売台数の多いクルマのCO2排出量をいかに減らすかなのだが、販売台数が多いクルマというのは得てして安価なクルマである。つまりCO2排出量が少なくとも、値段が高くて台数が売れないと、環境貢献度は上がらない。

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