クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ビンテージイヤーに乗った特筆すべきクルマ(前編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)

» 2020年12月14日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 ヤリス・ハイブリッドは最も装備が良いZグレードでも230万。廉価な仕様なら200万円である。ではヤリス・シリーズのWLTC燃費を基にCO2排出量を算出してみるとどうなるか? 一応厳密にいえば欧州ではWLTCではなくWLTPで、そこも少し違う。ルールの違う国の比較は簡単ではないのだけれど、とは言え、目安をおかないと一向に話が進まない一方で、アンフェアだと異論をふっかけられる可能性について、きちんと説明をしておかなくてはならない。あー面倒くさい。

  • ヤリス・ハイブリッドZ 1.5
  • WLTP燃費:35.4km/L
  • CO2排出量:66g/km
  • ※30年規制まであと1歩

 

  • ヤリスZ 1.5
  • WLTP燃費:21.6km/L
  • CO2排出量:107g/km
  • ※15年規制をクリア

 

  • ヤリスクロスハイブリッド Z1.5
  • WLTP燃費:27.8km/L
  • CO2排出量:84g/km
  • ※25年規制まであと1歩

 

  • ヤリスクロスZ 1.5
  • WLTP燃費:18.8km/L
  • CO2排出量:123g/km
  • ※15年規制をクリア

 

  • GRヤリス RZ "High Performance"
  • WLTP燃費:13.6km/L
  • CO2排出量:171g/km
  • ※15年規制未達

 

  • GRヤリス RS
  • WLTP燃費:18.2km/L
  • CO2排出量:128g/km
  • ※15年規制をクリア
ヤリス・ハイブリッドは、現時点でCAFE規制の2030年基準まであと一歩まで迫っている

 となっている、あと一歩で届いてないと惜しい気持ちになるが、どうせ加重平均してしまうので、個別の車種がクリアしているかどうかは問題ではない。そして全体としてこれだけCO2排出量が低減できているから、GRヤリスRZ "High Performance"のようなクルマを売ることができる。

 こうして並べてみるとヤリス・ハイブリッドのCO2排出量66gというのはやはり特筆すべき存在だ。なぜならば、パリ協定の中期目標である30年規制値にこの時点で肉薄しているからである。

 そしてこの数値が特定の条件でだけ出るベンチマーク対策の結果ではなく、筆者が300km実際に走行した実燃費もまた32.3km/Lというものだったのである。それは京都議定書からスタートした企業のCO2削減目標に初めて手が届くという話であり、歴史的快挙だといえるだろう。

 さらに大事なのはこのクルマが環境専用のキラープロダクツではなく、運動体としても極めてよくできていることだと思う。自動車産業のサステナビリティの旗印であるといっていいだろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.