クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ビンテージイヤーに乗った特筆すべきクルマ(前編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/6 ページ)

» 2020年12月14日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

GRヤリス

 これはGRヤリス RZ "High Performance"とGRヤリス RZのRZ系と、GRヤリス RSに分けて話をしなくてはならないだろう。こちらも試乗記のリンクを張っておこう(GRヤリス 一番速いヤツと一番遅いヤツ)。

 RZ系のラリー競技をベースとしたとてつもない図太さは、ちょっと他に例がない。カミソリではなくナタのようだ。どこからどう踏んでも、どうステアリングを切っても、着実なリアクションを返してくる感覚は強烈で、我々が普段乗っているクルマとは別物だといえる。まあもちろんのこと、どんな無茶な操作でも受け付けるという意味ではなく、相応の流儀に則った操作の範囲でという話ではある。

 特にラリー仕様に仕立てたクルマを、ダートのジムカーナコースでしごき回した感覚は忘れられない。こんなに思う通りに走るのかと感激し、もうこのままずっと走っていたいと思った。基本的にハイパフォーマンスカーには関心が低い筆者ですら、そういうことになってしまったところに自分でも驚いたくらいである。

 一方で、公道で許される範囲で走るのであればRSはとても良い。わずか264万円で、古き佳きスポーツハッチのイメージを残しながら、高精度組み立ての特別な凄みも感じさせてくれる。エンジンパワーを求めない筆者はGRの中ではこのRSに特に惹かれる。……という話をそろそろ切り上げなくてはならない。もっと大事な話があるからだ。

 GRヤリスの最大のポイントは、その生産改革にある。トヨタはGRヤリスのために、元町工場にGRファクトリーという専用工場を設けた。ここでは「セル方式」をベースにした全く新しい生産手法が取り入れられた。

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