ベンチャーキャピタルからの出資だけでは経営が難しくなると、次は顧客から予約金を集めることで、資金難を乗り切ろうともした。結果的にギリギリのところでテスラは踏みとどまり、中国に新工場を建設して「モデル3」の生産台数を一気に引き上げ、危機を乗り切ったのだ。時には発言などを通じて株価を高く見せることもあったが、それも危機を乗り越えるためだった。
少し前にイーロン・マスクがテスラをアップルに売却したいと、ティム・クックCEOに打診した事実が明らかになったが、報道によれば会うことさえ拒否されたという。アップルは独自の自動運転車を開発中であり、すでに構築されたブランドであるテスラには興味を示さなかったのだろうが、結果的にマスクは、なんとかテスラを手放さず危機を無事に乗り切ったのだ。
世界中の自動車メーカーがグループ再編の動きをみせているが、今のテスラを買おうとする自動車グループは存在しないだろう。理由は単純で、株価が高過ぎて手を出せないからだ。かつてトヨタが出資していた頃のテスラと、今のテスラは同じではない。
2020年だけを見てもテスラの株価は8倍にも高騰しており、カーボンニュートラル規制も伴って、世界的なEVへの期待からその過熱ぶりは留まることを知らない印象だ。
テスラの成功とEVブームの双方が背景にある北米では、テスラに続けとEVベンチャーが続々と登場している。
「モデル3」の量産に成功したテスラ。次の販売予定は、この二代目のロードスターだ。航続距離1000キロメートル、最高速度は時速400キロメートルなどの高性能を謳い、価格も20万ドル超と倍以上に跳ね上がった。限定モデルでとなる最初の1000台は予約時に25万ドルを支払わねばならなかったが、当時のテスラの資金難をカバーする目的だったことは明白。同様の手法で、トレーラー「セミ」、小型トラック「サイバートラック」なども多額の予約金を集めることに成功した
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