ジャック・マー氏“失踪”直前のスピーチ全文(後編)浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(4/5 ページ)

» 2021年01月15日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

 デジタル通貨の話をしましょう。未来の視座に立ち、30年後に世界が必要とする金融システムをつくる上で、デジタル通貨は非常に重要な中核です。今の金融はデジタル通貨を必要としていませんが、明日、そして将来必要になります。多くの発展途上国と若者にとってもです。私たちは、デジタル通貨が将来のどのような具体的な問題を解決するか、しっかり考えるべきです。10年後のデジタル通貨と今のデジタル通貨は、別物でしょう。

 デジタル通貨は歴史から方向性を探るのではなく、そして、規制の視点で将来の道を狭めてもいけません。研究機関の視点ではなく、市場の論理、需要、将来の視点で方向性を詰めなければなりません。デジタル通貨は物事の根本に関わります。研究機関は政策機関であってはならず、政策機関も自分たちの研究機関だけに頼るべきではありません。デジタル通貨のシステムは技術の問題ですが、それだけではなく、未来の問題を解決するソリューションでもあります。

 デジタル通貨はおそらく通貨の定義を変えるでしょう。通貨の主要機能は残っても、その価値は再定義されるでしょう。アップルによって携帯電話は再定義され、電話は一つの機能に過ぎなくなりました。それと同じです。デジタル通貨は通貨の標準の座を得ておらず、価値創造の段階、そしていかにデジタル通貨を通じて新しい金融システムを構築するかを考える段階にあります。

 全世界のために未来を考えましょう。世界の貿易をどうするか、また、世界中で導入に耐えられる技術基盤を用いてデジタル通貨を構築する方法を考えなければなりません。サスティナブル、エコ、そして誰でもアクセスできる貿易ソリューションを実現するべきです。

ジャック・マー氏が創業し、19年9月まで会長を務めた中国EC最大手のアリババのWebサイト(リンク

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