マロニーのブランド名には、吉村氏がシベリアに抑留された時に工場で一緒に働いていた少女「マロン」の明るいイメージが投影されているという。一方で、まろやかに煮えることから、マロニーになったとする説もある。
初代のマロニーは、緑豆デンプンにじゃがいもデンプンを加え、天然の葉緑素を混ぜて、薄い緑色をしていた。ところが知名度が全くないうえに、どんな商品なのか分かりにくく、全然売れなかった。出荷して1カ月後に全品が返品されてしまった。
パッケージを変更し、すき焼きの写真を入れてお鍋に適した食品だとアピールしたが、それでも売れなかった。
しかし、料理教室にサンプリングをしたり、CMを打つなどの宣伝活動に励んだ結果、徐々に認知が広がっていった。
67年には、ヨーサン食品に社名を変更。同年、お湯で戻す手間を省いた「生マロニー」を発売した。また、68〜69年にかけて原料をじゃがいもデンプンとコーンスターチに変更し、煮崩れしにくいマロニーの品質を向上させた。
マロニーを定着させるためには、社名は商品名と同一のほうが有利だと吉村氏は考えた。そこで、78年に社名をマロニー株式会社へと変更した。
ちょうどこの頃、ダイエーから生マロニーを扱いたいとの打診があり、納入を決定。本格的にスーパーなどの量販店を開拓する契機となった。
マロニーがブレークして全国ブランドに上り詰めたきっかけは、女優・中村玉緒さんが出演したCMの効果が大きい。CMは95年から放映された。
中村さんがCM中に歌った「マロニーちゃん」のフレーズは、台本になく、彼女のアドリブによるものだった。このCMによって、「マロニー」は「マロニーちゃん」へと擬人化されて、大衆のものになったと言えるだろう。
当時、中村さんは既に女優としての地位を確立していたが、バラエティに進出して新境地を開拓しようとしていた。そのため、時流に乗って勢いがあった。
それまでマロニーは関西でしか売れていなかったが、一気に全国へと販売が拡大した。
ただし、鍋の具材として有名になったので、売り上げの6〜7割が11〜1月の3カ月間に集中してしまう現象が起こっている。2000年代以降、同社の経営課題は、「鍋以外の用途で商品をどう売るか」に移っていった。
06年には、海藻の水溶性食物繊維(アルギン酸ナトリウム)を使った新商品「プチ! プチ! 海藻麺」を開発。カロリー・糖質・脂質がゼロで、水洗い不要。そのままトッピングするだけでサラダなどに使えるのが特徴だ。ヘルシー食材として、新市場の開拓を狙った。
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