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「半休」の代わりに「中抜け時間」、在宅勤務の「働きすぎ」防止策も導入……テレワークに積極的な企業に学ぶ柔軟な時間管理(1/2 ページ)

» 2021年02月08日 07時00分 公開
[人事実務]

 本記事は『人事実務』(2021年1月号)「働き方改革の現場から」より「チームスピリット」(20年12月9日取材)を一部抜粋、要約して掲載したものです。

 当該号の詳細はこちらからご覧いただけます。

自社ツールで時間の可視化に取り組む

 チームスピリットは、人事業務を一本化できるクラウドサービス「TeamSpirit」を開発・運営する企業である。同社では、自社内でも自由度の高い働き方を目指して2014年から自社のツールTeamSpiritも活用しながら働き方の変革に取り組んできた。フレックスタイム制度を基本的な勤務体系として、社員それぞれが生産性を発揮できる時間に働く。就業規則とは別に「在宅勤務規程」を設けており、就業場所を原則自宅とすることを定めている。コロナ禍のなかでは、2020年1月末から原則として全員テレワークを実施している。

<会社概要>

 ●社名:株式会社チームスピリット

 ●設立:1996年11月

 ●資本金:798,530千円(2020年8月末現在)

 ●事業内容:働き方改革プラットフォーム「TeamSpirit」を提供するB2BSaaS事業企業

 ●本社:東京都中央区京橋二丁目5番18号京橋創生館4階

柔軟な時間管理・中抜け時間

 フレックスタイム制度の運用の仕方としてユニークなのが、「中抜け時間」の活用だ。これは、一日の就業時間を複数回に区切って、「子どものお迎えのため1時間外出」「夕食後に仕事を再開」といった使い方ができるものだ。ツール上で一日に10回の打刻が可能になっており、中抜け時間を自動で休憩時間に振り分けて勤務時間を算出する。

 同社の取締役 戦略企画担当 山下康文さんは「中抜け時間は具体的な制度として設けたものではなく自然発生的に生まれたものですが、在宅勤務が拡大した現在でも組織内に定着しています」という。成果がオープンになっていれば中抜け時間を使っても仕事に手を抜いているとみられる心配はない。打刻すると内容がSNSで共有され、他の人がどのように利用しているかも分かるので、新しく入社した社員も気後れせずに利用できているそうだ。

 さらに山下さんは「当社に半休制度はありません」という。有給休暇の時間単位取得や半日の取得は、実質的に同じことが中抜け時間で行えるからだ。年始年末や夏休みも、会社として全社一斉の休日は最小限とし、相当の日数分を年次有給休暇に上乗せして付与している。取得時期は各自の裁量で決めている。

長時間労働を防ぐ工夫

 在宅勤務で問題になるのは、「働きすぎ」を防ぐことだ。同社では、主に次のような運用で長時間労働を防ぐ工夫をしている。

 まず、社員自身がツール上で自身の労働時間を把握する。部門長には、毎週各社員の勤務実態から算出した時間外労働の予測値が自動配信され、これをもとに注意を促したり、業務量の調整を行う。

 「決算時の経理部門、リリース時の開発チームなど、時期による負荷の偏りもありますが、打刻がしやすく働き方が可視化されているため、迅速な把握ができます」

 マネージャーによっては、工数をさらに「実務時間」と「事務作業」と「創造時間」に分類して、メンバーに対する日々のコーチングを行っているそうだ。

 在宅勤務が増えた4〜8月は、学校が休校となり子どもの面倒をみる必要のある社員が多くなったため、深夜に働く場合のガイドラインをあらためて周知したり、コアタイムの一時的な緩和、また所定の労働時間に満たない場合には特別措置対応を実施した。

photo 気軽な打ち合わせに使われる、チームスピリット社内のミーティングスペース(現在は、原則としてテレワークをしている)

オンラインでのコミュニケーション

 在宅勤務中に希薄化しがちなコミュニケーションに関しても、社員発信のアイデアも積極的に取り入れて取り組んでいる。社内の連絡にはメールを使わずSlackなどを使っているが、このSlack上で誕生日、入社記念日、新入社員入社日の当日に通知を送るといったこともした。

 「代表の荻島がそういったコミュニケーションを重視しているのですが、自分の誕生日を告知する投稿に『いいね』がついたと喜んだり、メッセージを送りあったりしています」

 また、月1の全社会議「All Hands Meeting」を在宅勤務移行後もオンラインで開催しており、その場で、入社者、誕生日月の社員、入社周年記念を迎えた社員の紹介を行っている。さらに、この全社会議では月1回投票形式で、社員の素晴らしい取り組みや、感謝のメッセージを集め共有している。互いに離れていても、先月誰がどんなプロジェクトをやりとげたかなど、社員間で貢献し合っている様子が可視化されている。

評価制度を刷新

 各自が自律的に、互いにさまざまな時間で働いていくには、時間によらないマネジメントが求められる。同社では昨年度に評価制度を刷新。OKRにのっとった目標管理制度を導入した。個人の能力や仕事の仕方などでアウトプットの質が大きく変わる非定型業務であるため「働いた時間ではなく、いかに質の高いアウトプットをしたか」を重視して設計されている。

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