同社はこの1年ほどの間で、評価制度を含めて人事制度の大幅な刷新・整備を行った。「きっかけとして大きかったのは、1on1や満足度調査の中で評価の透明度に関する疑問や不安がとても多かったことです。社員数が60人ならたがいに目も届きますが、116人になり、そのなかにはシンガポールの社員や在宅勤務の社員もいます。このままでは限界があるという判断になりました」
キャリアについても、もともとは直線的なキャリアだったものを、スペシャリストとマネジャーをそれぞれ再定義。各ポジションに対してスペシャリスト業務とマネジメント業務の配分を、会社から示した。
制度改革の成果が早速出てきているようだ。
「以前は高い技術をもつ社員であっても、積極的にマネジャーになりたいという人は限られていました。そこを、会社として期待する配分を示して、マネジメント業務だけをしなくてもよい、スペシャリストとして自分の技術を高める仕事もなくなるわけではないと示したことで、そういうことならマネジャーになってもよいと手が挙がるようになりました」
山下さんは、リモートワークはこのまま社会的にも定着していくとみている。「リモートワークならではの課題、つまりパフォーマンスの管理、規律、メンタル不調の予防や、社員間のコラボレーションといった課題には、今後も引き続き検討と試行を重ねていきたいと考えています。いまは、もともと関係性のできているメンバーで在宅勤務体制に入ったため、大きな問題は出ていませんが、今後新しいメンバーが増えたらどうなっていくか。そういった事も社内で試行し、そして自社内の経験の蓄積を製品にも反映させていきたい」
さらに副業の受け入れをはじめ雇用形態の柔軟化にも意欲的だ。
「優秀な技術者は副業制度の有無に注目しています。エンジニアは、自分のスキルをいかに高く保ち新しい技術を取り入れていくかに関心をもっていますから、一つの組織の中で経験できる仕事には限りがあり、副業で他の技術に触れることにメリットがあるのです。当社でも『副業先』としてそういった人の力を借り、さらにはチームスピリットのメンバーのスキルも上げていきたいと考えています。そのためにも、雇用形態も含め、働き方の形はより柔軟にしていくことを考えています」
会社の中と外は、今や切り離されたものではなく緩く連動している。自社の働き方にいろいろな実験的な取組を行うことで、その蓄積を商品開発に反映させる。そして同時により市場から魅力的に受け止められる環境作りに生かしていく。この循環がどのような成果につながっていくか、同社の取組の今後にも注目していきたい。
(2020年12月9日取材)
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