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リモートワークは絶対正義か 非リモート企業への「ブラック」批判が的外れなワケ働き方の「今」を知る(4/4 ページ)

» 2021年02月24日 05時00分 公開
[新田龍ITmedia]
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「リモートワーク=多様性」なのか

 世の中には、リモートワークしたくても叶わない業種や職種が存在する。そういった仕事に従事する人たちの感染リスクを抑制するためにも、リモートワーク可能な職種が率先してリモート対応することは必要であろう。しかしそれは決してリモートワークが「絶対正義」というわけではないし、ましてや非リモートワーク企業をブラックだと批判したり、見下げたりしてよいというわけでは全くない。

画像はイメージです(出所:ゲッティイメージズ)

 先述したように、リモートワークにもオフィス出社にも、それぞれメリットとデメリットが存在する。また同じ組織内においても、リモートワークを好む人もいれば、「リモートではやりにくさを感じるから、出社して対面で仕事をしたい」と考える人もいるだろう。

 リモートワークを巡っては「多様性」というキーワードが語られることも多いが、リモートワークをすることだけが多様性なのではないことに注意が必要だ。あくまで「リモートワーク“も”可能な環境が整備されている」「出社もリモートワークも平等に選択できる」といった具合に、「社会情勢や働く人の価値観に合わせた多様な働き方ができること」こそが、本当の多様性なのではなかろうか。

 もちろん、感染対策が全くなされないまま、「リモートワークはいろいろ面倒だから」といった程度の理由で出社を強要するのは問題外だ。しかし、然るべき対策がなされているのならば、「そういう方針の企業なのだ」「出社によって得られるメリットのほうが大きいのだろう」「対面ビジネスのニーズがあるのかも」と捉えることもできよう。方針が自分に合わないのならば、辞める自由は社員の側にあるし、ましてや自分の人生に何の関係もない別の会社の方針を批判するのはお門違いといえるだろう。

選択肢の多さが重要 リモートワークも選択肢の一つなだけ

 同様のことは、俗に「先進的」と称される取り組み全般についても当てはまる。「支払いのキャッシュレス化」「週休3日制」「社員の個人事業主化」――いずれも、取り組んでいない、対応していない会社に対して「遅れている」「ブラック」と批判される向きがあるキーワードだが、単純に良い悪いで判断できるものではない。

 むしろ全企業が対応を一律でそろえる必要はなく、「必要になったときにいつでも柔軟な選択ができる状態にしておくこと」こそが重要なのだ。リモートワークはあくまでオプションの一つでしかない。そう考えると、リモートワークできるのにやらせないことよりも、「そもそも選択肢が少なすぎること」や、「必要なときに肝心の決断ができないこと」の方こそ批判されるべきであろう。

 今後は、働き方のみならずあらゆる分野で、既存以外のさまざまな手段や方法を選択できることが当たり前となっていき、企業にはそれらを整備して提供するとともに、うまく使い分けることが求められるようになるはずだ。それは、単に「リモートワークに対応しろ」とだけ命令し、従業員を一律に管理するよりも困難な道となるだろうし、経営者や管理職は組織を構成するメンバーひとりひとりが最大限の力を発揮できるよう、個人と向き合っていかねばならなくなるだろう。

著者プロフィール・新田龍(にったりょう)

働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役/ブラック企業アナリスト

早稲田大学卒業後、複数の上場企業で事業企画、営業管理職、コンサルタント、人事採用担当職などを歴任。2007年、働き方改革総合研究所株式会社設立。労働環境改善による企業価値向上のコンサルティングと、ブラック企業/ブラック社員関連のトラブル解決を手掛ける。またTV、新聞など各種メディアでもコメント。著書に「ワタミの失敗〜『善意の会社』がブラック企業と呼ばれた構造」(KADOKAWA)他多数。


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