同社の店舗数は17年以降で毎年273店、466店、768店と破竹の勢いで増え続けている。19年の新規出店数は308店で、ほぼ毎日店がオープンしている計算になる。そこにコロナが直撃し、高成長に急ブレーキがかかったのは十分に理解できるが、実は20年も出店ペースはそれほど落ちず、6月末時点で店舗数は935店まで増えている。
20年も600店舗以上の開業を計画しており、1000店舗を超えるのは確実だ。
この数字を見ると、コロナ禍でも出店計画を見直した跡はうかがわれない。だが、その強気の姿勢が、「やみくもな規模拡大による経営効率の低下」と捉えられる面もある。
例えば店舗の回転数を見ても、経営効率の低下がうかがえる。18年は5だった客の回転数が19年は4.8、20年は3.3に落ちた。20年はコロナの影響を否定できないが、それ以上に外部からは、消費力の高い一級都市、二級都市で店舗が飽和し、(比較的規模が小さい)三級都市への出店が増えていることが原因だと分析されている。
中国の著名外食チェーンの決算を見ると、北京ダック店として有名な「全聚徳」も20年の売り上げが前年から半減し、最終損失が2億4000万元〜2億6400万元(約40億円超)に達するとの業績予想を発表している。同社が最終赤字に沈むのも07年の上場以来初めてだ。
一方でケンタッキー・フライドチキン(KFC)やピザハットなどを運営するファストフード大手のヤム・チャイナ・ホールディングスの20年の売上高は6%減にとどまり、純利益は68%増加した。
中国のケンタッキーはコロナ禍でいち早く非接触デリバリーシステムを取り入れ、また、「孤食」に適していることから、外出制限はむしろ追い風となり、海底撈と比較するのは適切ではないかもしれない。
ただし市場関係者は、海底撈の持つ「積極的な規模拡大」「DX」のイメージを、伝統食の北京ダックを売りにする全聚徳よりも、効率化が命運を握るファストフード業界に近いと見ており、一部証券会社は海底撈の業績予想を受け、目標株価を引き下げもした。
ワクチン接種が進み、感染をほぼ抑え込んでいる中国では海底撈の客足も戻ってきている。3月に店舗を訪問した日本人親子は、「平日だったら2時間待ちで、完全に復活したように見える」と話した。
昨年の長期休業を機に、これまでも展開していたデリバリーをさらに強化し、ブランドの多角化も進める海底撈。神話をつくったが故に、「コロナ」の爪痕がほぼなくなった21年も成長が続くか注目されている。
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37。
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