トランプ後も制裁継続、世界巻き込む半導体戦争へ<ファーウェイの現在地・上>浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(4/5 ページ)

» 2021年03月25日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

発端の孟晩舟副会長、審理は数年継続か

 ファーウェイと米国の攻防において日本は蚊帳の外にいるため、同社が今どういう状況にあるのかはあまり伝わってこない。ファーウェイ・ショックの着火点となった孟副会長は今どうしているのか。

 孟副会長はトランジット先のカナダで、米国の要請を受けたカナダ当局に逮捕され、19年1月に「ファーウェイがイランとの取引を行うために、米国とHSBC(香港上海銀行)を欺いた」として、詐欺罪などで起訴された。その後、バンクーバーの裁判所で、孟氏の米国への引き渡しを判断する審理が始まった。

 孟氏側は「起訴内容はカナダでは罪に当たらない」と主張したが、裁判所は20年5月に同氏の主張を退けた。審理は21年3月に再開され、現在は「逮捕の手続きの正当性」が争われている。

 孟氏の代理人は「孟氏の行為は香港で行われたものであり、米国の管轄権の及ばない海外での行為に米国の法律の網をかけるのは、国際法に違反している」と主張。さらに孟氏の逮捕の手続きには、合理的な理由のない逮捕令状の発行・執行や権力の濫用など、多くの違法行為が存在すると訴えている。

 また、孟氏側は20年から「トランプ大統領が貿易交渉の切り札にするため、孟氏の訴訟手続きに不当に介入している」とも主張している。中国外交部も3月18日の記者会見で「孟晩舟事件は、完全な政治案件だ」と、改めて米国を批判した。

 孟氏の判決は5月に出る見込みだが、米国への引き渡しが決定したとしても、孟氏が上訴するのは確実で、司法手続きの決着には数年かかると見られている。

 さらに3月19日、22日には、中国で2年前にスパイ容疑で拘束されたカナダ人2人の審理が非公開で始まった。中国側は孟晩舟氏逮捕の「報復」を否定するが、カナダに揺さぶりをかけているのは明らかだ。

 カナダ検察は、「トランプ氏はすでに大統領職を退いており、介入も起きていない」として「政治の司法手続きへの影響」を否定するが、孟氏の代理人は「大統領が代わっても、米政権の介入姿勢は変わらない」と反論する。

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