トランプ後も制裁継続、世界巻き込む半導体戦争へ<ファーウェイの現在地・上>浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(3/5 ページ)

» 2021年03月25日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

 ただ、ファーウェイが日本でニュースとして多く取り上げられるようになったのは17年だ。きっかけは2つある。

 1つ目は、ライカのカメラを搭載した高機能スマホ「P9」のヒットだ。中国スマホが持つ「格安」のイメージに加え品質の高さも認知され、ガジェット好きの間で他社端末から乗り換える動きが起きた。さらにファーウェイが日本人記者を深センや海外の発表会に招待するようになり、急速に同社製品の露出が増えていった。

 もう1つは、日本法人であるファーウェイ・ジャパンが出した「初任給40万円」の新卒求人だ。キャッシュレスやECなど中国のIT社会が徐々に知られるようになった時期でもあり、「中国は日本を超えた」「高度人材が中国企業に奪われる」と大きな話題になった。

 創業以来付きまとっていた「人民解放軍」「中国企業」のレッテルは容易にははがせなかったが、「作っている製品は高品質」「研究開発に力を入れている」ブランドイメージも固まってきた中、18年12月に任CEOの長女で副会長兼CFOの孟晩舟氏が逮捕され、「ファーウェイ」はワイドショーの素材にまで“昇格”した。

 ただ、当時トランプ大統領らが「証拠を見つけた」と断言していた「端末に情報を抜き取るバックドアが仕掛けられている」という主張は、今に至るまで証拠が示されていない。

東莞市のファーウェイスマホ製造ライン。トヨタ自動車OBを招いて生産の改善を重ねているという(筆者撮影)

 それでも、ファーウェイが国家の安全にリスクをもたらす企業とのイメージは定着し、日本も次世代通信網5Gの採用で、同社を事実上排除した。

 トランプ大統領は米企業にファーウェイとの取引を禁じ、5G機器やスマホの生産に必要な半導体の供給ルートも断った。通信機器で世界トップ、スマホで世界2位の座にあったファーウェイは、絶対絶命と言ってもいい状況に陥っている。

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