ただ、ファーウェイが日本でニュースとして多く取り上げられるようになったのは17年だ。きっかけは2つある。
1つ目は、ライカのカメラを搭載した高機能スマホ「P9」のヒットだ。中国スマホが持つ「格安」のイメージに加え品質の高さも認知され、ガジェット好きの間で他社端末から乗り換える動きが起きた。さらにファーウェイが日本人記者を深センや海外の発表会に招待するようになり、急速に同社製品の露出が増えていった。
もう1つは、日本法人であるファーウェイ・ジャパンが出した「初任給40万円」の新卒求人だ。キャッシュレスやECなど中国のIT社会が徐々に知られるようになった時期でもあり、「中国は日本を超えた」「高度人材が中国企業に奪われる」と大きな話題になった。
創業以来付きまとっていた「人民解放軍」「中国企業」のレッテルは容易にははがせなかったが、「作っている製品は高品質」「研究開発に力を入れている」ブランドイメージも固まってきた中、18年12月に任CEOの長女で副会長兼CFOの孟晩舟氏が逮捕され、「ファーウェイ」はワイドショーの素材にまで“昇格”した。
ただ、当時トランプ大統領らが「証拠を見つけた」と断言していた「端末に情報を抜き取るバックドアが仕掛けられている」という主張は、今に至るまで証拠が示されていない。
東莞市のファーウェイスマホ製造ライン。トヨタ自動車OBを招いて生産の改善を重ねているという(筆者撮影)
それでも、ファーウェイが国家の安全にリスクをもたらす企業とのイメージは定着し、日本も次世代通信網5Gの採用で、同社を事実上排除した。
トランプ大統領は米企業にファーウェイとの取引を禁じ、5G機器やスマホの生産に必要な半導体の供給ルートも断った。通信機器で世界トップ、スマホで世界2位の座にあったファーウェイは、絶対絶命と言ってもいい状況に陥っている。
英が一転5G排除、中国ファーウェイに迫る次の「Xデー」
7月14日、英政府が5G通信網からファーウェイを排除すると発表した。欧州各国はアメリカによる同社排除以降、中国との関係を深めたが、コロナ禍で悪化した対中感情などが背景にあると見られる。また同社は2020年前半の決算を、英政府発表の前夜午後11時すぎにひっそりと発表しており、カナダで拘束中の孟副会長の2度目の審理日「Xデー」が近いともされている。
ジャック・マー氏“失踪”直前のスピーチ全文(前編)
2カ月余り公の場に姿を現さず、その消息がさまざまな憶測を呼んでいるアリババのジャック・マー(馬雲)前会長。2020年10月24日に氏が行ったスピーチが、中国の金融当局を批判し、習近平国家主席らの怒りを買ったとの説もあるが、実際の発言と大きくずれた報道も増えている。そこで、筆者訳のスピーチ全文を全2回に分けて紹介したい。
ジャック・マー氏“失踪”直前のスピーチ全文(後編)
アリババのジャック・マー(馬雲)前会長が、2カ月余り公の場に姿を現さず、消息についてさまざまな憶測が流れている。氏が2020年10月24日のスピーチで、中国の金融当局を批判したため、習近平国家主席らの怒りを買ったとの説もある。今回は、筆者訳のスピーチ全文の後編を紹介する。
フィンテック「金縛り」のアリババ、市場予想を上回る決算発表 〜今後はローエンド市場を強化
アリババグループは2月2日、2020年第3四半期決算を発表した。中国当局の監視が厳しくなる中、売上高は前年同期比37%増の約3兆5600億円、純利益は同52%増の約1兆2800億円と、市場予想を上回るものとなった。今後は、コロナ禍の消費変化に対応する新事業やのローエンド市場を強化する方針を強調した。
「6年前のM&A」でアリババに罰金、企業分割もちらつかせる中国当局の真意
アリババなど中国大手IT企業3社が12月14日、独占禁止法違反で50万元(約800元)の罰金を課せられた。いずれも過去のM&Aを当局へ申請しなかった点が問題視されている。世界ではGAFAへの規制が強まっているが、中国をデジタル大国に押し上げた立役者であるメガIT企業に対しても、同様に当局の姿勢が締め付けへと変化している。
上場延期で衝撃、中国・アントを知る5つのキーワード
史上最大のIPOと注目されていた中国アリババの金融子会社アント・グループの上場延期が11月3日に発表された。ジャック・マー氏ら幹部3人が前日に金融当局の指導を受け、上場計画の見直しを迫られたことが理由だ。本稿ではアントの歴史や事業構造、今後の見通しなどを5つのキーワードからひも解いていく。
バイトダンスとオラクルの説明にズレ〜 TikTokは米中どちらの企業なのか
中国バイトダンスのショート動画アプリ「TikTok」と、米オラクル、米ウォルマートとの技術提携案が今月19日、トランプ大統領の「原則承認」を受けた。しかし、バイトダンス、米企業2社の発表文のニュアンスにずれが生じており、TikTok新会社の立ち位置を巡り、憶測や波乱の芽を生んでいる。
米国のWeChat禁止令で「ファーウェイが伸びアップルが失墜」の可能性
トランプ米大統領が8月6日、「TikTok」のバイトダンス、「WeChat(微信)」のテンセントとの取引を、9月下旬から禁止する大統領令に署名した。TikTokは想定内だが、サプライズなのがテンセントだ。WeChatがアプリストアから削除されれば、iPhoneの出荷台数は25%以上減少するとみるアナリストもいる。
「孫正義氏はアリババへの投資で運を使い切った」中国メディアが分析するソフトバンク低迷の要因
ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長が6月25日、中国EC最大手のアリババの取締役退任を表明した。5月にはアリババ創業者のジャック・マー氏が、SBGの取締役を退くと発表。一方SBGは、2020年3月期の連結決算で過去最大の最終赤字を計上しており、中国メディアでは「孫氏はアリババへの投資で運を使い果たした」という辛辣な分析も出ている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.