現在、日本国内でステマそのものを規制する法律はない。したがってステマは即違法行為とならないが、優良誤認や有利誤認などにより、消費者保護が目的の景品表示法違反につながりかねない、極めて黒に近いグレーな行為となる。
米国や欧州では消費者を欺く行為としてすでにステマが法律で禁止されており、規制の遅れを指摘する人も少なくない。実際、2017年に日本弁護士連合会は「ステマを法律で規制すべき」と消費者庁へ意見書を出している。
現在ステマは、WOMマーケティング協議会やインターネット広告推進協議会(JIAA)など、広告に関わる業界団体のガイドラインを参考に判断されている。要するに自主規制だ。そしてステマ=ネットで行われるモノと考えている人も多いと思うが、決してそうではない。
筆者が目にした範囲だが、テレビの情報番組でごく一般的な料理コーナーだと思って見ていたら突然、調理器具の通販コーナーに切り替わる、という場面を見た時には腰を抜かしそうになった。
健康器具の通販コーナーを生放送の情報番組の中で行い、出演者がそれらの健康器具を使いながら感想を述べたりと、番組なのか宣伝なのか区別がまったくつかないような宣伝も目にした。当然、画面にこれは広告です、これは通販です、といった表記もない。
これがWebメディアの記事ならば、記事と広告の境目が分からない広告、記事の中で宣伝を行うステマとして即炎上するようなやり方だ。この2つの事例はフジテレビではないが、いずれもあまりにズサンと言わざるを得ない内容だ。Webメディアがステマに過敏といえるほどの対応をしている一方で、テレビ局はステマを対岸の火事として見ているのではないか? そのような鈍感な態度が今回の問題の発端につながっているのではないか? このように指摘せざるを得ない。
今回のフジテレビの女子アナによるステマ疑惑について、フジテレビは週刊文春の取材にステマではないと答えている。ただ、週刊文春の続報では美容室によるサービスについて「7人で100回以上、総額200万円を下らないサービスを無料で受けていた」と説明されている。
これが事実かどうかについて、「事実関係は確認中だがステマではないと考えている」というのがフジテレビの見解のようだ。事実関係が不明な状況でステマではないと断言するのも奇妙だが、現状では疑惑の段階ということになる。
お金を受け取っていないから別にいいとの意見も一部ではあるようだが、ではこれが飲食店ならどうか、洋服やアクセサリーならどうかと考えていくと、モノには金銭的な価値があり、現在ではネットオークションで換金が容易なことを考えると、(性質に違いはあっても)お金はダメでモノやサービスならいいとはいえないことも簡単に分かる。
したがって金品を受け取りながら、それを隠してSNSでお店を紹介する行為はステマに該当するといわざるを得ない。
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