ミスマッチが起きる背景はさまざまだが、共通していえるのは「問題が起きていても声を上げづらい」という事実だ。
日本人の特徴として、言いたいことが言えずに抱え込んだり、言わなくても理解して欲しいという期待をもっている人が少なからずいる。そのため、企業が積極的に意見を聞きに行く必要性が諸外国と比べて高い。
周囲が問題に気が付かないと、入社者は長らく不満を抱え、我慢の限界に達したときに突然退職の意思表示をする。事前に分かっていれば解決できたかもしれない事柄や、時には単なる誤解によって、退職を引き起こしてしまうことは非常にもったいない。
評価者である上司に、入社者が本音を話すことは非常にハードルが高い。そのため、配属後も上司任せにせず、会社に慣れるまで定期的に人事が面談したり、ツールを導入したりしてシステマチックに意見を拾い上げることが重要だ。そして、定期的な状況確認や上司側への働きかけなど、人事にしかできない役割で入社後の活躍までの道のりをサポートしていただきたい。
早期離職が発生すると、採用後に始まる予定だったプロジェクトが進まなくなるなど、事業計画に遅延を引き起こすこともある。また、採用コスト、選考に費やした時間の損失は大きく、別の人を探すのに同じ期間を要すれば、採用に倍の時間がかかったことになる。
さまざまな手を尽くしても解決が難しく、退職が防げない場合は仕方がない。しかし、人生の大きな転機として入社を決意してくれた方に、思うような活躍の場が提供できなかったことを真摯に受け止め、誠実な対応を心掛けていただきたい。
企業が不誠実な態度を示せば、退職者が会社や上司の悪口を言って社内の雰囲気を悪くしたり、離職後に社外で悪いうわさを立てたりするリスクもある。
企業にとってのダメージを最小限に抑えるための働きかけも、人事の仕事として時に必要だ。企業の都合による早期離職の場合、外資系企業ではまれに、転職サポートをしている企業もある。
入社後のミスマッチは、人事に多くの負担を強いることになる。そのため、採用戦略立案や選考段階など、入社前にできる限りの対策を講じていただきたい。そして、入社者が新しい環境で活躍することに集中して仕事ができる環境の提供を目指していただきたい。
本連載でお伝えしてきた採用ノウハウが、みなさまの企業の採用精度向上の一助となれば幸甚だ。
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