西武園ゆうえんちで再確認、観光アクセス鉄道の役割と効果杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/7 ページ)

» 2021年05月21日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

レオライナー、昭和カラーに変身

 私にとってレオライナーの乗車は04年以来の17年ぶり。すっかり忘れていたけれど、車内はボックスシートだった。これは昭和の長距離電車に通じる。欲をいえばスピーカーから昔の電車の「うぉぉぉん」というモーター音を流してほしかったけれど、鉄道エンターテインメント施設ではないと納得する。

 ちなみに、西武球場前から出発して西武園ゆうえんちに到着する片道だけ「オリジナルの西武園ゆうえんちPR放送」が行われる。今回は多摩湖駅側から行ったので聞けなかった。次は西武球場前駅側から乗りたい。そのためには西武池袋線の西武球場前直通の準急に乗ったほうがラクだ。なるほど、ちゃんと西武鉄道も運賃を稼げるルートができている。

西武園ゆうえんちに到着。右側の土管は昭和の空き地をイメージしたモニュメント

 西武鉄道の広報からレオライナーのラッピングについて「あえてかつての“西武鉄道”ではなく(当時呼ばれていた)“西武電車”とプレスリリースに書きました。気付いていただけましたか」とのこと。気付かなかった。参った。

 西武園ゆうえんち駅に着いて、駅舎を出た途端、そこから昭和レトロが始まっていた。路面電車と停留所があり、その奥にチケット売り場があって、見上げれば昭和レトロ風の外観を模した映画館がそびえ立つ。

西武園ゆうえんち駅を出ると昭和の世界

 路面電車は都電風の塗装だけど、顔つきが左右非対称で違和感がある。実はこの車両は19年まで、長崎電気軌道の1051号車として路面電車で走っていた。さらにさかのぼると1948年に仙台市電向けに新製された電車だ。都電としては違和感があるけれども、昭和レトロ世界を東京都内に固定しないためには、この顔のほうが良かったかもしれない。

都電風の電車は元仙台市電、次に長崎電軌軌道で活躍して当地へ

 長崎電軌軌道では、維持管理費の問題で151号車と1051号車の2両について譲渡先を募集した。151号の方が都電風の顔つきだったけれど、151号はもともと箱根登山鉄道の小田原市内線で走っていた電車だから、小田原市の有志が「里帰りプロジェクト」を立ち上げ、クラウドファンディングで費用を集めて実現させた。これも良い話だ。

都電にはない顔つきが「架空の昭和の街」を示しているかのよう
車内も見学できる。広告などが昭和レトロ感をそそる

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