西武園ゆうえんちで再確認、観光アクセス鉄道の役割と効果杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/7 ページ)

» 2021年05月21日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

観光アクセス鉄道は、鉄道経営の基本だった

 西武鉄道が観光アクセス路線を意識しないわけがない。もともと西武鉄道は秩父、川越の観光地にアクセスする特急「レッドアロー」を走らせてきた。「レッドアロー」は「ニューレッドアロー(NRE)」そして「Laview」に進化し、大きな窓をしつらえて目的地のワクワク感と乗り心地の良さをアピールしている。

 なぜなら、川越は東武東上線というライバル路線があるし、秩父も東武東上線寄居ルート、JR湘南新宿ライン熊谷ルートというライバルがあるからだ。しかも、都心から現地までの到達時間でいえば新幹線で熊谷に出る方が早く、同じ運賃レベルでも湘南新宿ラインのほうが早い。西武特急も頑張っているけれどもスピードでは勝てない。そこで「楽しさ」を追求して対抗している。観光地の楽しさを出発地から楽しんでもらおうというわけだ。

秩父、川越観光ルートを担う特急「Laview」(写真手前)と先代の「ニューレッドアロー」(写真奥)

 この考え方にならえば、西武園ゆうえんちのアクセス路線はレオライナーにとどまらず、西武池袋線、狭山線直通で池袋〜西武球場前を結ぶ特急、あるいは特急に準じた楽しい列車の運行もあるはずだ。

 そう思っていたら、西武園ゆうえんちのグランドオープンに合わせて、5月22日〜6月6日の土日限定で、西武新宿〜多摩湖間の直通列車を運行すると発表された。池袋〜西武球場前間はすでに定期列車の直通があるから、これで新宿、池袋の2大ターミナルから直通列車が走る。西武新宿〜多摩湖間も定期列車になると思うし、帰りは着席保証の列車があれば嬉しい。ぜひ検討してほしい。

 西武園ゆうえんちに足りない2つのうち、アクセス路線はできた。もう1つはホテルだ。これは遊園地付近ではないかもしれない。西武鉄道は路線網の中心にある所沢を中核として、秩父・飯能・川越・狭山湖・多摩湖の新都市圏を造ろうとしている。だからホテルは所沢に中核となる大型ホテルを置くプランがいい。

 今のところ所沢駅、西所沢駅、新所沢駅、多摩湖、狭山湖にホテルがある。所沢にもうひとつ大型ホテルがほしい。しかし西武ホールディングスは、新型コロナウイルス関連の不景気を受けてホテル資産を売却している。西武グループが手掛けられないとすれば、他のホテルチェーンのチャンスかもしれない。それが所沢の活性化につながれば西武HDにとって悪い話ではない。

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