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» 2021年05月21日 08時00分 公開

西武園ゆうえんちで再確認、観光アクセス鉄道の役割と効果杉山淳一の「週刊鉄道経済」(7/7 ページ)

[杉山淳一,ITmedia]
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ローカル線の観光開発は目的地とセットで

 観光地と観光アクセス路線は表裏一体。ともに力を合わせて発展していく。この視点で見ると、赤字ローカル線の観光路線化は、鉄道路線の改良だけでは不十分といえる。観光列車は「観光地の移動手段」ではなく、「それ自体が観光の目的」となる列車として脚光を浴びた。しかし、観光列車ができれば自動的に観光地が栄えることはない。

 観光地がしっかりと魅力を持ち、発信することで観光アクセス路線は成立する。逆に、観光列車で成功した路線は、沿線の観光開発でさらに発展するだろう。新型コロナウイルスの影響で、JR西日本のほかローカル線の運行縮小も始まり、路線廃止も危惧されている。その路線を残すだけの観光列車だけではなく、その先の目的地の魅力作りが必要だ。

 その意味で、現在期待している路線は徳島県と高知県を結ぶ阿佐海岸鉄道だ。世界で初めてDMV(デュアルモードビークル、道路と線路の両方で走行可能)を走らせ、観光客を呼び込もうとしている。この路線はもともと南海トラフ地震時の交通手段として温存されており、その経費削減を目的にDMVを導入する。しかしそれだけではまだ赤字だし、珍しい車両を走らせたいから観光に役立てたい。

 しかし、DMVだけでは観光の目的にはなりにくい。DMVを見たいなんて鉄道ファンくらいだ。ほとんどの人はまず観光地に注目し、そのアプローチの楽しみとして交通手段を捉える。だから「珍しい車両を走らせる」だけで安堵してはいけない。これは全国のローカル線に共通する課題だ。

道路と線路の両方で走行可能なDMV。「四国の右下」こと徳島県南東部〜高知県を結ぶ阿佐海岸鉄道が準備中。これを観光の中心とするか、面白いアクセス路線とみるか。欲張って両方を狙いたい

 国民の多くがワクチンの接種を接種すれば、いままで観光を我慢してきた人々が一斉に動きだすだろう。その時のために観光アクセス路線と観光地を整備しておきたい。レオライナーと西武園ゆうえんちの関係を見て、あらためて思った。

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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