そのため、労働者の意向を確認せず、会社主導の転籍が原因で労使間の争いとなった場合、会社が不利な立場に置かれる可能性が高まります。転籍の実施の際は、労働者の同意を得るのは、ほぼ必須となります。
労働者の同意が必要なのは出向の場合も同様ですが、もともと在籍した会社と労働契約がなくなる分、転籍のほうが労働者の同意は得にくくなるため、対応はより慎重に行う必要があります。
また、転籍では労働契約の終了を伴う関係上、退職金の扱いについてもあらかじめ決めておく必要があります。シンプルなのは転籍の際に退職金を支払う方法ですが、関連会社への転籍などの場合、転籍先をやめた時点で退職金を支払うこともあります。
こうした退職金に関する扱いに関しては、先ほどの転籍に関する労働者の同意と併せて対応を考えたいところです。具体的には、転籍の同意を得やすくするために退職金を上積みするなどの対応です。
このように、実施の際のハードルは、出向よりも転籍のほうが高いといえます。
その一方で、転籍後については、転籍者の労務管理や賃金、保険料の支払い等は、基本的に全て転籍先の会社の責任により行われるため、転籍者に関する権利義務は、非常にシンプルなものとなります。
コロナ禍で出向のニーズが高まっていることから、厚生労働省はより出向に特化した助成金として令和3年2月、産業雇用安定助成金を創設しました。
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