今回それが大幅に改良された。特にシャシーについては、スバルが新世代シャシーとしてデビューさせた、スバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)に、フルインナーフレーム構造を加えた成果は極めて大きい。SGPではフロントからリアまで構造材を穏やかでスムーズな屈曲ラインでつなぎ、剛性の変節点を極力回避した。これがすべてのベースである。
加えて溶接のやり方を変えた。乱暴にいって、クルマはエンジンルーム、キャビン、トランクの3つのセクションで仮組みをしてからつなぎ合わせる。場所によっては意匠を担う外板そのものが構造材になっているために、溶接点が自由に選べない。外から見える部分を避け、さらに溶接機の入る場所を選定して溶接を行うということは、つまり必ずしも剛性のためのベストな場所で溶接できなかったということである。
フルインナーフレームはボディを2層構造にして、構造材であるインナー側のフレームの3セクションを先に溶接する。これに後からデザイン外板を溶接するのである。こうすると構造溶接部分を力学的により理想的な位置で行え、外板のような剛性をさして担わないパーツだけ美観を気にして溶接することができる。
さらにCピラー前にボディを周方向に巻くように環状構造材を入れることができた。SGP、フルインナーフレーム、環状構造材という3つの技術の採用によって、ボディ剛性が格段に向上した。ボディが硬くなったことで、アシをスムーズにストロークさせることができるようになった。これによって、ハンドリングが向上したのはもちろん、乗り心地にまで雲泥の差が付いたのである。
また水平対向ユニットは排気量を400cc増やした2.4リッターにスープアップ(シリンダーの内径サイズアップなどの改良)し、下から豊かなトルクを与えられただけでなく、5ミリの低重心化が行われた。
とはいえ排気管の取り回しのしんどい水平対向ユニットは、クランクセンター位置をこれ以上下げるのは難しい。ではどうしたのかといえば、エンジンの上に乗るインテークマニフォールドをアルミから樹脂に置き換えた。トップ側の重量物を軽くすることで、トータルの重心を下げたのである。
しかし実は、それだけが樹脂化の理由ではない。このユニットにはマニフォールド噴射とシリンダー直噴を両方備えた、デュアルインジェクターが採用されているのだが、燃料と空気の混合をより最適化させるのと同時に、燃焼速度をより向上させるために、タンブル(縦渦)の強化を図った。そのためには吸気をタンブルへと導きやすいマニフォールド形状が必須で、造形の自在性が高い樹脂製のマニフォールドが必要だったという点も重要だ。
剛性を高めたシャシーとパワートレインの低重心化は、機械の成り立ちとしては、極めて正統な進化である。
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