7月24日に公表された「意見」は、未成年の健康を守るために宿題と校外学習を軽減する「双減」政策を掲げ、小中生向け学習塾に「上場・資金調達禁止」「新規開校禁止」「広告禁止」「土日の授業禁止」「授業料は政府が管理」を迫った。大手教育企業やコロナ禍で急成長するオンライン教育企業は存続すら危うくなり、大半がリストラや業態転換に着手している。
20年11月のアリババ金融子会社アント・グループの上場への横やり、そして20年6月に米国で上場した配車サービス滴滴出行(DiDi)への調査で、中国政府の規制に相当敏感になっている投資家でも、双減政策の極端さ加減は想定外だったようで、米国、香港、中国に上場する教育系企業の株価は大暴落した。
ただし、経済参考報の記事はテンセントの規制を示唆する意図はなかったようだ。テンセントの株価が暴落し、米メディアなどが騒ぎ始めた3日午後、記事は削除された。削除されたことでさらなる憶測を生んだが、実は夜になってタイトルが元の「精神のアヘンが数千億元産業に」から「オンラインゲームは数千億元産業に」と変更された上で、新華社から再配信されている。文中からも「精神のアヘン」「電子毒物」の部分が削除され、トーンはかなり落ち着いた。
経済参考報自身がテンセント株価の急落に驚き、慌てて軌道修正を図ったと見られる。
新華社から再配信された、修正後の記事(リンク)。記事タイトルが変更され、文中からもオンラインゲームを形容する刺激的な表現が削除されている
そしてテンセントは3日午後、双減政策に対応した以下の新ルールを発表した。
- 未成年ユーザーのゲーム時間を、平日は従来の1.5時間から1時間に。祝休日は3時間から2時間に制限する
- 未成年ユーザーは午後10時から朝8時までプレイ禁止
- 小学生以下のユーザーの課金禁止
- 未成年がゲームにのめり込まないよう、深夜のモニタリングを全日モニタリングに変更する
- 成人からアカウントを購入するなどの偽装行為を防止する
ほかのメディアからは「テンセントだけでなく社会全体が協調して未成年を守らないといけない」という記事が複数出て、事態は収束した。
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トランプ米大統領が8月6日、「TikTok」のバイトダンス、「WeChat(微信)」のテンセントとの取引を、9月下旬から禁止する大統領令に署名した。TikTokは想定内だが、サプライズなのがテンセントだ。WeChatがアプリストアから削除されれば、iPhoneの出荷台数は25%以上減少するとみるアナリストもいる。
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