テンセント、株価急落に続き「未成年者保護法違反」で提訴。毒物ゲーム「王者栄耀」が標的に浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(5/5 ページ)

» 2021年08月12日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]
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未成年保護法違反で「WeChat」提訴も

 ただし、中国では21年6月に改正未成年者保護法が成立したこともあり、双減政策と合わせて、オンラインゲームやSNSへの圧力は今後さらに高まると予想される。

 北京市海淀区の検察は8月6日、テンセントのメッセージアプリ「WeChat(微信)」に搭載された「青少年モード」が、未成年保護法に違反しているとして、民事訴訟を起こしたと発表した。検察は具体的な違反行為について説明しておらず、テンセントも「青少年モードの機能を検証し、ユーザーの意見や訴訟に誠実に対応する」とコメントを出すにとどめた。

 テンセントによると、青少年モードは20年10月に搭載した機能で、保護者が操作してコンテンツ閲覧や配信、ミニゲーム、クレジットカード利用などの制限をかけられる。そもそもが当局の意向に沿って追加した機能とも説明している。

「青少年モード」の画面。保護者が、コンテンツなどの閲覧・配信、クレジットカード利用などに制限をかけられるペアレンタルコントロール機能だが、これが未成年保護法に違反していると訴訟を起こされた 

 この1年、中国はIT企業が絡む法律を整備すると誰もが知る大手企業への適用を試みるのがお決まりとなっており、企業や投資家側にとっては国からの脅しにもなっている。

 独占禁止法はEC最大手のアリババ、そしてサイバーセキュリティー法は膨大な個人情報を持ち、かつ米国で上場したため情報流出のリスクが出てきた滴滴にはめた。この流れで行くと「子どもにとっての毒物」であるオンラインゲームの最大手であるテンセントが、未成年保護法に引っ掛けて何らかの処分を受けることは十分に考えられる。

 そして最近の中国政府は、自国の産業にとって明らかにマイナスだと分かっていても大ナタを振るうことを厭わない傾向がある。投資家は当面、国営メディアの論説に振り回されることになるかもしれない。

筆者:浦上 早苗

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37

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