大企業で20年6月1日からすでに執行されている労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)は、中小企業においても22年4月1日から同様に施行されます。これにより、各企業において職場におけるパワーハラスメント防止対策を講じることが義務付けられることは、周知の通りです。
各社でパワハラ防止の啓発活動が行われる中、労働者においても〇〇ハラスメントといった形でハラスメントに対して意識が高くなっています。新入社員であっても、指導が気に入らなければ“パワハラだ”と訴えてくることも考えられます。
そんなこともあってか、中にはハラスメントと言われるのを恐れて指導すべきことを指導できていない上司がいます。たとえハラスメントと言われても、人格否定をするような場合を除き、そこにあるのはあくまでも業務指導であり、適正な範囲を超えていなければハラスメントには該当しません。
適切な指導をしないことが原因で、職場においては当然、許されないことすらも理解してもらえないとなると、結果として大きな労務トラブルに発展してしまうこともあり得ます。
筆者の世代は「お金を稼ぎたい」という欲求が高いと感じているのですが、いわゆる“イマドキの若者”はお金ではなく、承認欲求が高い傾向にあると言われています。だからといって、何でもかんでも褒めまくる上司がたまにいますが、その手の上司が部下の育成に成功したという事例はあまり聞いたことがありません。
実際にあった例では、早起きを習慣にしている若手社員に対して「早起きがえらい」と褒めていたのですが、それは見当違いです。社員を育成、成長させるには成長するために必要なポイントを褒めなければ意味がありません。
例えば、オフィス内の書庫が煩雑になっていたのを見て、言われる前に使いやすいように整理整頓をした社員がいたとします。この場合は、「何も言ってないのに気付いてくれてありがとう。さすがだね。みんなすごく使いやすくなったよ」といった形で主体的に整頓してくれた事実を見逃さずにしっかりと褒めてあげることが重要です。「主体的に動くことで承認されるんだ」「みんなの役に立てたんだ」と思えば、その欲求を満たすために積極的に取り組んでくれるようになるでしょう。
このように、効果的に褒めて承認し、それをしっかりと評価してあげることで、イマドキの若者社員は一皮むけ、成長できるわけです。
コロナ禍でテレワークが通常の働き方になっている現在においては、上司と部下はコミュニケーションが取りづらく、また周りの環境も見えづらくなっています。上司としては見ているつもりでも、新入社員からすれば「どうしたらいいのか分からない」「このままで大丈夫かな」など不安を抱えているケースは少なくありません。
上司がそのことに気付かないため不安が解消されず、また業務に目的を見いだしづらい新入社員は、「楽しくない仕事」といった認識を持ち、退職してしまうことも考えられます。それでは当然、会社の利益にもつながりません。
コミュニケーションについては、新入社員だけが「できていない」とやり玉に上げられがちですが、昭和世代の指導者も新入社員とのコミュニケーションは十分ではない可能性があります。
社会人経験が浅い若者は、確かに驚くような行動を起こすかもしれません。しかし一方で、その指導者であるあなた方も、やっぱり「できていない」ことを理解する――これが、新入社員とのギャップ、そして心のスキマを埋めるための第一歩と言えるでしょう。
特定社会保険労務士。1980年1月12日生まれ。2007年11月に社会保険労務士法人 大槻経営労務管理事務所入所。2010年に社会保険労務士登録。2013年に特定社会保険労務士付記。数名規模から数千人規模の事業規模、業種ともさまざまなクライアントを担当し、サテライト勤務や在宅勤務をはじめとしたテレワークを生かした働き方のアドバイスを得意とする。
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