『文春』と『新潮』が中づり広告から撤退、それでも車内広告に未来はある杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/7 ページ)

» 2021年08月20日 12時47分 公開
[杉山淳一ITmedia]

大手広告主「週刊誌」の撤退相次ぐ

 電車の中づり広告は衰退するだろうか。週刊文春、週刊新潮とも、中づり広告の代表選手だ。大げさにいうと大手2社、その撤退はひとつの転機になるだろう。実は両者とも掲載路線は減っていたようで、報道によると週刊文春は東京メトロで毎回約1700枚程度しか掲載していなかった。ほかの路線でも見かけていたけれど、それは東京メトロの乗り入れ路線だ。

 東京メトロの広告を扱うメトロアドエージェンシーの広告料金一覧表を見ると、1700枚のメニューは「丸ノ内線系、2〜3日間」だ。丸ノ内線のほかに、日比谷線、有楽町線、半蔵門線、副都心線がセットになっている。乗り入れ先は東急東横線と田園都市線、東武伊勢崎線と東上線、西武池袋線である。相互直通運転の隠れた効果というわけだ。

 週刊誌の中づり広告減小の予兆はあった。振り返ると、14年に中づり広告減小を決定づける出来事があった。TBSの東京ローカル番組『噂の東京マガジン』の名物コーナー「今週の中吊り大賞」が終了し、「週刊!見出し大賞」に変わった。

 「今週の中づり大賞」は、1週間に掲示された電車の中づり広告を一覧し、最も気になるテーマに「大賞」を進呈しつつ、注目したテーマを掘り下げていく。その週で大賞を受賞した週刊誌に★マークが与えられ、年間大賞を表彰していた。しかし、だんだん中づり広告を出す雑誌が減ったため、中づり大賞のままでは企画が成り立たなくなっていた。

 総務省の情報通信白書平成29年版によると、12年に日本のスマートフォン普及率が5割を超えた。ちなみにNTTドコモによるiPhoneの販売開始は13年だ。中づり大賞の終了はその翌年にあたる。中づり広告減少とスマートフォン普及を関連付けて捉えられている。同白書の令和3年版では、スマートフォン普及率は8割を大幅に超えているという。電車に乗る人のほとんどがスマートフォンを持っている。

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