『文春』と『新潮』が中づり広告から撤退、それでも車内広告に未来はある杉山淳一の「週刊鉄道経済」(7/7 ページ)

» 2021年08月20日 12時47分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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 動いたほうが注目度は高いと思うけれども、乗客は最新の情報を欲しがっている。次に停まる駅はどこか、今夜の天気はどうか、おカネをかけて動く広告だけがサイネージの役割ではなかろう。こうした努力をしないまま、大口の車内広告主を逃してしまった。ここは反省すべきところだと思う。

 それでは、今後、中づり広告は廃れるだろうかといえば、そうでもなさそうだ。中づり広告は新たなアイデア実験場になりつつある。

 日本テレビは箱根駅伝のキャンペーンとして、中づり広告に駅伝参加大学のタスキを模した帯を垂らして話題になった。イケアは布張りの素材を膨らませて吊し、リネン類など家具以外の商品の品ぞろえをアピールした。穴の空いた広告、商品サンプルをちぎり取れる広告などもある。

 中づり広告は「タイムリーではない」ことを除けば、まだまだユニークな広告メディアとして生き残れる。いずれすべてデジタルサイネージに取って代わる時代が来るかもしれないけれど、チャレンジできるメディアだと思う。

 デジタルに傾倒する週刊誌だって紙媒体をあきらめていない。

 広告業界も中づりをあきらめてはいけない。

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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