『文春』と『新潮』が中づり広告から撤退、それでも車内広告に未来はある杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/7 ページ)

» 2021年08月20日 12時47分 公開
[杉山淳一ITmedia]

中づりスペースなしの通勤電車が誕生していた

 鉄道事業者側にも中づり広告減小に対応する動きがあった。14年にJR東日本は山手線向けの新型車両「E235系」の投入を発表した。車内広告媒体として窓上に三連液晶モニターを搭載し、中づり広告を廃止する方針だった(詳細は、筆者記事参照)。

 しかし、当時はまだ中づり広告は鉄道の副収入の要であり、特に山手線は収益の柱だった。結局、広告業界からの強い要請を受けて、E235系電車には中づり用の金具が後付けされた。

E235系(出典:Wikimedia Commons 山手線E235系
E235系の車内は中づり広告もある(出典:Wikimedia Commons JRE-Series-E235 Inside

 中づり広告を完全に撤廃した通勤電車は17年に誕生した西武鉄道の40000系電車だ。車内の小さなステッカー広告を除く広告はすべてデジタルサイネージになった。中づり広告があった部分にも画面が設置されている。

 同様の装置はJR西日本が321系電車や225系電車で採用しており、中づり広告と併用している。10年にはJR東日本も成田エクスプレス用の259系電車にフライトインフォメーション用として搭載された。現在は広告スペースとして販売も行われている。

 鉄道業界は緩やかに、中づり広告のデジタル化を進めているといえそうだ。

西武鉄道40000系
西武鉄道40000系の車内、中づり広告はデジタルサイネージ化された

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