『文春』と『新潮』が中づり広告から撤退、それでも車内広告に未来はある杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/7 ページ)

» 2021年08月20日 12時47分 公開
[杉山淳一ITmedia]

中づり広告は生き残れるか

 週刊誌の中づり広告撤退は、メディアとしての鉄道事業者にとって痛手だろう。しかし、タイムラグの問題を放置した報いでもある。印刷は物理的に時間がかかるし、中づりの掛け替えは手作業だ。「だから仕方ない」とあきらめてしまった。

 しかし、積極的に導入しているデジタルサイネージを活用すれば、タイムラグは限りなくゼロにできる。週刊誌の発売日前日にデジタルデータで広告データを納品し、発売日に車内で上映するという仕組みは可能なはずだ。

 例えば、山手線E235系に搭載されているデジタルサイネージは、WiMAX通信で更新できる。これは本来は広告用ではなく、運行情報を乗務員に提供し、合わせて車内の画面にも提供するシステムだ。E235系より前の電車は、駅の停車中または車庫でミリ波による通信で広告データを更新していた。

E235系に搭載された車両制御システム(INTEROS)は、広帯域を利用して広告データも配信できる(出典:JR東日本 研究開発(R&D) 次世代車両制御システム(INTEROS)の開発

 この仕組みはきちんと手を加えれば、翌日の広告を前日夜にセットできた。それが、E235系以降は走行中にリアルタイムで更新できる。ファストフードチェーン店などで「本日17時から新メニュー発売」などのタイムリーな広告を提供できる。しかし、残念ながら今のところは動画コンテンツにご執心の様子だ。

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