世界的ブランドであるアラジンのブルーフレームをグループの製品として販売するようになった千石だが、主力製品が暖房器具のため12月までに製造が終わってしまい、冬場は工場の稼働が大幅に減るという課題があった。そのため一年中、平均的に売れる製品を生み出すことを急務としていた。
そんな中、ひとつの話が舞い込む。パナソニックが持っていた特許技術の買い取りの打診だ。10年当時、パナソニックではグループ全体での選択と集中により、不採算部門や研究部門の再編が行われていた。
「パナソニックとは、こたつヒーターの製造を受注するといった付き合いが以前からあり、その関係で来た話でした。そのときに知財権や設備などを丸ごと買い取ったのが、0.2秒で素早く発熱するグラファイトヒーターです」(千石氏)
パナソニックからグラファイトヒーター製造の一式を買い取った千石は、その技術を用いた電気ストーブを12年に製品化する。だがこれは、元々得意分野である暖房器具で、しかもグラファイトヒーターを使った暖房器具は過去に三洋電機も手掛けており、特別新しいものではなかった。
「特許技術買い取りの話とは別に、当時の課題だった年間を通して売れる家電として有力候補に挙がっていたのが、製造実績があるオーブントースターでした。しかし、すでに市場には数多くのオーブントースターがあり、さらに当社ではOEM製造も受注していました。
その市場へ参入することに意味があるかといった議論を交わしている中で、特許を買い取り、その結果としてオーブントースターにグラファイトヒーターを搭載してはどうかという話が若手の開発者たちから出てきたのです」(千石氏)
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