“パナの特許”と“世界ブランド”でイノベーション 2万円トースター誕生の裏側:家電メーカー進化論(5/7 ページ)
グラファイトヒーターを搭載したアラジンブランドのオーブントースターの成功は千石を大きく変えた。元々暖房器具向けに使われていたヒーターを調理家電に転用し、さらに有名な老舗ブランドの製品として仕立てた取り組みは特許庁からも高く評価され、令和3年度の知財功労賞を受賞している。
「特許庁から、日本はたくさんの技術を保有しているのにイノベーションが起きにくいといわれました。我々は中小企業なので大きなイノベーションは起こせませんが、買収したアラジンというブランドと、パナソニックから買い受けたグラファイトヒーターを合わせて、トースターを商品化しました。のどかな場所にある中小企業が、既存技術を組み合わせた商品化を行った点が評価されたようです」(千石氏)
令和3年度に特許庁から受賞した知財功労賞。中小企業による、既存技術を組み合わせた商品化が評価されたという
現在のラインアップはカラーバリエーションを除いて、トースターが3モデル、グリラーが2モデル。そして実はこれ以外にもカセットガスを使うホットプレートや七輪のようなコンロなど、さまざまな製品を展開している。
「この春発表したご飯も炊けるトースターは、チャンピオン商品を作りたいと考えた製品です。トースターを極めたい、そのためにあらゆる可能性を追求しようとマルチな調理ができるトースターを開発しました。
また、同時に発表したポップアップ型は、逆にトーストの美味しさに完全に集中した商品として企画しました。今後はトースターを軸にした生活空間を提案できたらと考えています」(千石氏)
今年4月に発表されたフラグシップモデルの「アラジン グラファイト グリル&トースター CATGP14A」。調理用のグリル皿に加えて炊飯釜も付属する
- ニトリも認める老舗メーカー 新社長が挑む「脱・大ヒット」と「全員野球」の哲学
2009年スタートの「ルルド」は、シリーズ累計の販売台数1100万台を突破するほどの人気ブランド。ルルドを手掛けるのは、もともと折りたたみベッドなどの健康器具メーカーで、1992年創業のアテックスだ。約10年前にスタートした健康家電事業の軌跡と、今後の展望について、社長の深野道宏氏に話を聞いた。
- 急成長のサンコーが、「オモシロ家電」を追求する意味とは
「サンコー」といえば、ユニークで一風変わった「おもしろ家電」で知られるメーカーだ。面白さと同時に、コスパの良さと便利さも備え、人気を博している。この「おもしろ家電」を開発できた秘密とは一体何なのか。サンコーの山光博康CEOに話を聞いた。
- 日本進出7年で売上200億突破のアンカー・ジャパン、“成功の裏側”と多ブランド戦略の意図
Ankerグループは2011年創業。13年設立の日本法人は初年度売り上げ約9億円、18年には200億円超と急成長を遂げ、今やモバイルバッテリーの代名詞ブランドとなった。また家電、オーディオデバイス、モバイルプロジェクターなど、次々と新ブランドを展開。急成長の秘密と多ブランド展開の戦略と展望を、猿渡歩COOに聞いた。
- AV機器メーカーが電気圧力鍋を開発、大ヒットの秘密は「なんでもできる」の廃止
テレビメーカーであるピクセラの子会社・A-Stageが、ライフスタイルブランド「Re・De(リデ)」を立ち上げ初の製品となる電気圧力鍋を発売。2年間の販売目標を8カ月で達成する大ヒットとなった。ピクセラはなぜ、畑違いの調理家電をヒットさせられたのか。A-Stage社長とピクセラ副社長を兼任する藤岡毅氏に聞いた。
- プロダクトアウトの罠にハマった「象印」のリカバリー戦略
電気炊飯器市場でトップシェアを誇る象印マホービンは、2018年に100周年を迎えた。高級炊飯器のヒットとインバウンド需要に押され、10年ごろから右肩上がりで売り上げを伸ばしたが、16年をピークに減少。そこへコロナ禍が発生した。この長引く苦境をどう乗り越えるのか。取締役の宇和政男氏に話を聞いた。
- 「100億円プレーヤーはもう飽きた」変わり続けるバルミューダの野望
2020年12月16日には東証マザーズに上場したバルミューダ。前回はクリーナーを軸に、製品の開発工程や同社ならではのスピード感、デザインへのこだわりについて紹介した。今回は、同社が上場を目指した目的、上場後の未来と野望について、代表取締役社長の寺尾玄氏に語っていただいた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.