“パナの特許”と“世界ブランド”でイノベーション 2万円トースター誕生の裏側:家電メーカー進化論(4/7 ページ)
グラファイトヒーターを搭載したストーブにパンを近づけると焼けることはすでに開発チームが試していた。とはいえ、オーブントースターにグラファイトヒーターを搭載すると高コストとなり、売価も上がってしまう。実際、大手メーカー数社に提案してみたが、高いトースターは売れないと断られたそうだ。
16年に発売した初代のグラファイトトースター。0.2秒で素早く発熱する特性による美味しさで注目を集めた
「試作機を作ってみたら、理由は分からないのですがパンが美味しく焼けると分かりました。ならば自社で作って売ろうという話になったのです」(千石氏)
ところが、コストを積み上げていくと、どうしても売価は2万円近くになる。当時、オーブントースターの価格は3000〜4000円程度がほとんどで、1万円前後の製品がわずかにあるくらいだった。当然、営業サイドからは「こんなに高いトースターは売れない。もっと価格を抑える方法はないのか」と猛反発を受けた。
しかし、社長が「高価格で美味しさを優先する」という指針を示したことで、15年秋にグラファイトヒーターを搭載した「アラジン グラファイト グリル&トースター」が誕生する。当初はあまり売れていなかったが、テレビ番組に取り上げられたことで潮目が変わる。
「16年にNHKの『ガッテン』や朝の情報番組など、多くのテレビ番組で他社のトースターと一緒に紹介されたことをきっかけに、人気に火が付きました。それから毎年、コンスタントに売れ続けていています」(千石氏)
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