――その社会課題解決の取り組みには例えばどんなものがあるのでしょうか?
コンサルティングファームだからこそできることに着目しています。つまり、あるべき社会やそのための道筋を描き、課題解決に伴走していく取り組みです。チョコレートの原材料であるカカオは、児童労働によって支えられている面があります。しかし、消費者が実際にコンビニでチョコレートを見ても、その商品が児童労働によって作られたカカオを使っているものなのかどうかは分からないんですね。どうしたら日本企業がその問題を解決できるかと考えたときに、ひとつはメーカーが「私たちは児童労働によって作られたカカオを使っていません」と宣言する手段があります。
仮に値段が高くなったとしても、児童労働には反対だというメッセージを発する。そうすると、その企業の高邁(こうまい)な理念に共感する消費者がついてくる。ただ、そうしたメッセージングだけでは限られた範囲内でしか広がらない現実的な経営的課題もあります。
――確かに、一部の意識の高い層にしか届かない部分もありますね。
そこでコンサルティングファームだからこそできる解決策は「経済合理性のリ・デザイン」だと考えています。企業も消費者も経済合理性によって動くことを現実と捉え、そもそも取り巻く社会や経済ルールそのものを変えてしまおうというものです。
カカオの例で言えば、児童労働によって作られたカカオに高い関税をかける仕組みを作ります。そうすると、そのカカオは高値になるので、企業はそれを選ぶ経済合理性がなくなりますよね。あわせて、どのカカオが児童労働のものではないかを、流通上もしっかりと追えて認証する仕組みを、ブロックチェーンの技術を利用して作ろうとしています。
――経済合理性もある上で、社会貢献もできる仕組みを作ろうとしているんですね。
環境の悪化や人権侵害などSDGsで掲げられている課題には、経済合理性が起因しているケースが多くあります。一方で、企業にとっては利益を損なわない仕組みがないと、どんなに社会貢献度が高くてもサステナブル(持続可能)ではないわけです。われわれコンサルティングファームができることは、第三者的な立場から企業同士の利害を調整して、変化を加速させていくことです。それが結果、大きな社会変革につながると信じています。
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