攻める総務

さくらインターネット、将来は「路面型オフィス」に? 面積10分の1の新オフィス移転はあくまで「通過点」オフィス“再構築”は続く(3/3 ページ)

» 2021年10月29日 11時30分 公開
[渡辺まりかITmedia]
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支社は縮小、本社は再構築

 手始めに行われたのは、東京にある支社のオフィスの縮小だ。3.5フロアあった新宿オフィスのうち、3フロアが全席固定の執務室だったが、1.5フロアに縮小。さらに全席をフリーアドレス制とし、業務を行なうための執務エリアは、執務のほか会議、イベント開催など多目的に利用可能な空間にし、1on1用のミーティングスペースも用意した。また、オンラインで社外へメッセージを発信しやすいよう、スタジオも設けた。

photo 東京支社のスタジオ(同社提供写真)

 しかしこれが単なる縮小ではないことは、コミュニケーションを重視した作りへと変更したことから見て取れる。フリーアドレス制にしたことも、スタジオを作ったことも、さらに会議室フロアをイベントスペースとしても使えるようにしたことは、オフィスを業務の場からコミュニケーションを取る場へ転換したいという意図が汲み取れる。

 「東京支社の場合は、出社する人数が減ったので、それにオフィスをフィットさせるという意味合いが大きかった」と中川氏。しかし支社オフィス縮小を経て「オフィスって本当に必要なのか、必要だとしたら今ある場所である意味があるのか、この状態でイノベーションは起こるのか、といった、オフィスの定義を根本から定義し直す必要があると考えた」と言う。

 リニューアルであれば、今そこにあるものを変えていくだけだ。しかし、さくらインターネットが考えたのは「根本から定義し直す」こと。パーツをいったん全部バラし、一つひとつ確認しながら組み直していくという意味でオフィスの“再構築”を図ったのだ。

 再構築するうえで重視したのはコミュニケーションだ。社員同士はもちろん、社外の人も気軽に立ち寄ることができ、社外の人同士、または社員と社外の人が自由闊達に意見を交換可能な場を目指した。

 これまで本社のあったグランフロント大阪は、最新機能を備えており、オフィスとしては申し分のないロケーションだった。執務スペースは全席フリーアドレス制。広さを生かして社外の人にも参加してもらえるイベントを年間200回も行った。

photo さくらインターネット 総務部 情報システムグループ ユウ 昌日(取材はオンラインで実施した)

 「社外の人との交流を行いたいという目的をある程度達成することはできたが、35階というフロアであること、商業ビルのオフィスフロアであることから、社外の人が気軽に立ち寄れるような場所ではなかった」とユウ氏。「オフィスの所在地を変更する必要があると考えた」と振り返る。

 そこで、同市内の東京建物梅田ビルへ10月に移転。オフィスの広さは、移転前の850坪から85坪へとコンパクトになった。

photo 大阪本社のバーカウンター(同社提供写真)

 実は、移転先のオフィスは居抜き。以前からあったバーカウンターや作業用デスクを有効に活用した。バーカウンターが置いてあったスペースはオフィス全体の約半分の面積を占めていたが、そこをオープンエリアとし、来訪者がちょっとしたPC作業を行ったり、社外の人でも気軽に立ち寄れるようにした。

 もちろん、社員同士のコミュニケーションもおろそかにはしていない。このオープンエリアで軽く食事をしつつ、多拠点や自宅で仕事をしている人と会話できるよう、テレビ一体型のWeb会議システム「Zoom Rooms」をバーカウンターに設置した。

 「オフィス自体は居抜きでも、他の場所や人とつながる、コミュニケーションできる、という思想をオフィスデザインに組み込んでいる」(中川氏)

 また、東京支社の再構築にあたっては、従業員への「働き方と本社オフィスに関するアンケート」や160人以上が参加したワークショップの結果から、エンジニア同士がリアルの場でコミュニケーションを取りたいと考えていることを把握していた。これをエンジニアたちがコミュニケーションを取りながらイノベーションにつなげられるように、少し広めの部屋「ラボ」を開設した。

 結果として、「エンジニアが大半を占める当社らしいコミュニケーションが生まれている」(中川氏)ようだ。

 「コロナの影響で移転・縮小」にとどまらず、今後も続いていくさくらインターネットのオフィス再構築プロジェクト。アフターコロナも見据え、同社は今後どのようなオフィスを設けるのか。

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